北朝鮮は1月14日午前に日本海に向けて弾道ミサイル数発を発射。前週の6日には極超音速の中距離弾道ミサイルを発射したばかりなので、新年早々の連射となる。もちろんこの一連の動きは、1月20日にスタートしたトランプ新政権への挑発的意図があることは明らかだ。
ウクライナの戦争でも、ロシア西部のクルスクでの戦闘を中心に1万2000人規模を派兵。ウクライナのゼレンスキー大統領によれば、うち3000人がすでに戦闘で失われたとのこと。それと同時に、今後10万人まで増員される可能性もあるとしており、北朝鮮が国際社会を不安に陥れる度合いは増すばかりだ。
コリア・レポートの辺真一編集長が、この問題の複雑さを解説する。
「アメリカでのトランプ政権誕生で停戦への動きが高まる中、少しでも有利な立場で交渉を進めたいウクライナとロシアの間で、特にクルスクでの戦闘が激化している。北朝鮮軍の暗躍ぶりをゼレンスキー大統領は執拗にアピールしていますが、10月に北朝鮮軍が派兵されて以来、つい最近になってやっと捕虜2人が生け捕りにされて、1月12日に肉声が公開されたばかりです。しかもそこで語られたのは、演習のはずがウクライナでの戦争に送られるとは思ってもみなかったというもの。だとすればロシアと北朝鮮は昨年12月に包括的戦略的パートナーシップ条約を結んだので、ロシアのクルスクに北朝鮮軍が派兵されたのだとしても、何ら、国際法上の理屈は成り立たなくなってしまいます。今後、ウクライナが国際世論に訴えかける意味でも、停戦に向けた交渉の上でも、現状は非常にマズいことになっています」
そんな北朝鮮にとって都合がいいのが、まさにその「トランプ政権の誕生」だ。
「以前の『24時間以内の戦争終結』から『6カ月以内』と、だいぶトーンダウンしているトランプ大統領ですが、仮に停戦に向けて事態が動き、現在のロシアとの蜜月状態も終わることになって都合が悪くなるかと言えば、北朝鮮にとってはどっちでもいいでしょう。どのみちトランプ・プーチン・金正恩は、1人が倒れればドミノ倒しのように3人が倒れてしまう関係性にありますからね。また、停戦の動きとは別に米朝首脳会談が実現して、トランプと金正恩との間でディールが成功すれば北朝鮮は経済制裁から解放されることになります。なのでどう転んでも北朝鮮は損をしないというのが実情です」(前出・辺氏)
そんな北朝鮮の増長ぶりが、他の分野でも目立ち始めている。そう語るのは、国際ジャーナリストの山田敏弘氏だ。
「日本では昨年末にJALや三菱UFJ銀行といった企業がサイバー攻撃でシステム障害の被害に遭いましたが、これはDDoS攻撃というロシアによるサイバー攻撃の典型的な手口です。しかし、ロシア国内からの攻撃ならばサイバー攻撃成功後には犯行声明を出すはずですが、今回は出していません。よって今回のサイバーテロは中国もしくは北朝鮮によるものとの見方があります。北朝鮮のサイバーテロは仮想通貨の強奪が主でしたが、もし今回のサイバーテロが北朝鮮の仕業だとすれば、ロシアのウクライナ侵攻を巡る経済制裁以後に状況が変わり、政治的な意図から北朝鮮がそこに加わってロシアに代わり報復を行っている可能性が考えられます」
まさに憎まれっ子世に憚る、とでも言うしかない。