「守備の迷手」の迷走にこれ以上、拍車がかかりはしないか。阪神・藤川球児監督が打ち出した佐藤輝明の「ユーティリティー起用」に、不安の声が高まっているのだ。
藤川新監督は1月21日に兵庫県内のホテルで行ったスタッフ会議後、
「ポジションに関しては、トライしてもらうことになる」
と明言。岡田彰布前監督時代は三塁に固定起用だった佐藤の方針を転換し、状況に応じて内外野の複数ポジションで出場させることを決めた。一塁と三塁の両ポジションでゴールデングラブ賞に輝き、今季はレフトでの出場が視野に入る巨人・岡本和真を念頭に置いているが、これにあるOBが疑問を投げかける。
「別に岡田前監督の路線を引き継ぐことがいいとは思わないし、選手起用に関しては監督の専権事項だけど、サトテルだからね。ただでさえ打撃にウェートを置いているタイプなのに、試合中にポジションを変更させることがプラスに働くとは思えない。現状、内野では難しいなら今後のことも考えて、外野手として出場させた方がいいのかもしれない」
昨季の佐藤は三塁手として、両リーグ最多となる23失策を記録。「失策王」と陰口を叩かれた。ただ、失策の数が即、守備力のバロメーターになるわけではない。スポーツ紙ベテラン記者は、
「失策は公式記録員の判断もありますからね。難しい球際の打球にチャレンジして弾いたり、後ろにそらせばエラーとして記録されることがないわけではない。守備範囲が狭くても無難に打球を処理していればエラーを犯す心配はあまりなく、守備率100%に近づく。ただ、それが守備の名手なのか、ですよ」
佐藤は簡単な打球処理でミスを連発し、勝敗を左右するシーンが目立つ。阪神は38年ぶりに日本一に輝いた一昨年、ゴールデングラブ賞を大量受賞。内野手部門では佐藤以外、阪神勢が独占した。それだけに、佐藤の拙守がクローズアップされているが、平均的な守備力を身につけるためには、練習以外にない。前出のベテラン記者は、
「春季キャンプでは内外野ともに、徹底的に練習させる時間はそれほどない。フォーメーション投内連携などの実戦的な練習も入ってきますし。場合によってはどっちつかず、二兎を追う者は一兎をも得ず、になりかねない」
まずは地道に積み上げていくしかないのだが…。
(阿部勝彦)