中居正広と女性とのトラブルに端を発したフジテレビ問題。「女子アナの上納が常態化していたのではないか」との疑惑が払拭されぬまま、憶測が憶測を呼ぶ中、1月17日に開かれた港浩一社長の会見は、クローズドな状態で行われた上に、生放送や映像撮影は許可せず。突っ込んだ質問に対しては「被害者女性のプライバシー保護」を盾に回答を避け、「説明責任」をまるで果たさなかったことで、火に油を注ぐ結果に。スポンサーは次々と離れ、CMはほとんどがACジャパンに差し替えられた。報道によれば、フジテレビの損失は数百億円にも及ぶとか。
フジテレビ最大の危機。さぞや社内も緊迫しているに違いない…と思ったが、1月25日放送「オールナイトフジコ」の通常運転に、本当に反省しているのかどうか、少々の疑念が湧いた。
「オールナイトフジコ」とは、かつて「オールナイターズ」なる現役女子大生を出演させて「女子大生ブーム」を巻き起こした、1980年代の人気深夜番組「オールナイトフジ」の後継として、2023年4月から始まった番組だ。
その「オールナイトフジ」に当時、ディレクターとして関わっていたのが、現在の港社長ということで、まさに「社長の肝煎り」でスタートしたような番組だ。
1980年代の「オールナイトフジ」に比べればだいぶ薄まったとはいえ、その軽薄なノリと番組の成り立ち(そして「フジコーズ」の、どこか性的な匂いがする存在も)が、フジテレビが現在置かれている状況にそぐわないので「当分、放送を見合わせるんじゃないか」と勝手に思っていたのだが、この日も普通に始まった。
オープニング、少々重い空気の中、メインMCの佐久間宣行が「これは始まってますよね。始まらないかもしれないっていう噂も聞いたんだけど」と言うと、MCの森田哲矢(さらば青春の光)が「ACがある限り、やります」と、くすぐりを入れる。
すると進行役の佐野瑞樹アナは「戸惑われているメンバーもいらっしゃるかもしれませんけれども、今回の件はこちらの問題でございますので、皆さんはいつも通りの楽しい番組をお願いしたいと思います」とコメントしたのだが、なんか「フジコーズ」に向かって話しているようで、その実、視聴者やスポンサーに「番組や出演者に非はありませんから」と言っているように聞こえてしまう。
そしてこれはこちらの邪推だが、どうしたって「フジコーズ」の面々も「上納品か」という目で見てしまう。それは他の女性アナたちも同様ではあるが…。
港社長と大きな関わりがある番組であるからには、たとえ番組や出演者らには「非がない」としても、「関係がない」と言い切れるのだろうか。佐野アナの「こちらの問題」という言葉に、そもそも「内々でコトを済ませよう」としていたフジテレビの(それは多くの企業にも共通する)体質が見え隠れしているように思えて仕方がない。
そんな雰囲気を察知したのか知らないが、森田は「今日だけはクローズドでやりませんか」とボケたものの、こちらとしてはクスリとも笑えなかったし、現場が本気で変わろうとしているのかも怪しい。たとえ上層部や経営陣が交代したところで、本当にフジテレビが変われるか、疑わしいのだ。
(堀江南/テレビソムリエ)