Jリーグ開幕を告げる「FUJIFILM SUPER CUP 2025」が2月8日、国立競技場で行われる。
今回の対戦カードは、Jリーグ連覇と天皇杯の2冠を達成したヴィッセル神戸と、最終戦まで優勝を争った2位サンフレッチェ広島。攻守にバランスが取れた神戸と、リーグ最多得点という攻撃力が武器の広島という、見応えのある好カードになった。
ただ、両チームとも、2月は6試合をこなすハードスケジュール。例えば神戸は、8日に広島と戦った後、11日にACLE(AFCチャンピオンズリーグエリート)で上海海港とホームで対戦し、15日に浦和レッズとの開幕戦を迎える。さらに18日にはACLEで上海申花と、アウェーで対戦する。
一方の広島も神戸戦後は、12日にACL2(AFCチャンピオンズリーグ2)でナムディンFC(ベトナム)とアウェーで対戦し、15日にアウェーで町田ゼルビアとの開幕戦を迎える。そして19日には再びACL2の試合で、ナムディンFCをホームに迎えることになる。
両チームのハードスケジュールを考えれば、スーパーカップで無理はしたくない。特に主力選手を90分使うことは、できるだけ避けたいと思うはずだ。
それでも、見どころはある。特に広島はジュビロ磐田から、得点ランキング3位の19点を決めたジャーメイン良を獲得。昨季はなかなかパスが出てこないため、前線で孤立する場面があったが、広島はリーグ最多得点を誇る攻撃的なチーム。孤立する時間は少なくなるし、パスも出てくる。チームにフィットすれば20点以上どころか、得点王の可能性もあるのだ。
もうひとりは、湘南ベルマーレから移籍してきた田中聡。ボランチの松本泰志が浦和に移籍し、その穴を埋めるべく獲得した選手だ。パリ五輪世代で最初から先発出場していたが、2022年の夏にKVコルトレイク(ベルギー)に期限付き移籍。1シーズンで湘南に復帰したが、その際に「海外でプレーするのは、まだ早かった」と言っていた。試合に出られないのに2年も3年も海外にしがみついている選手がいる中、勇気のある決断だった。
最終的にパリ五輪代表メンバーには選ばれなかったが、昨季はレベルの違いを見せ、デュエルの強さ、ボールを奪ってからの展開力と攻守に活躍し、Jリーグ優秀選手に選ばれた。広島で活躍すれば、再び欧州挑戦の話が出てくるはずだ。
一方の神戸に大きな補強はなかったが、昨季のMVP武藤嘉紀、一昨年のMVP大迫勇也という2人のコンディションは気になる。ただ、個人的に注目しているのが齊藤未月だ。若年層の代表には必ずと言っていいほど選ばれていた。湘南、ルビン・カザン(ロシア)、ガンバ大阪を経て、2023年に神戸に移籍。開幕からポジションを奪い、先発出場した。ハードワークでチームを活性化させ、神戸になくてはならない存在だった。
ところが、8月の試合で負傷。検査の結果、左膝関節脱臼、左膝複合靱帯損傷(前十字靭帯断裂、外側側副靭帯断裂、大腿二頭筋腱付着部断裂、膝窩筋腱損傷、内側側副靭帯損傷、後十字靭帯損傷)、内外側半月板損傷と診断され、長期離脱。ひとつ間違えれば選手生命にかかわる大ケガだった。
あれから1年半、ついにピッチに戻ってくる。サポーター、チームメイト、チーム関係者が待ちに待った瞬間が、スーパーカップで見られるかもしれない。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。