自民党と連立を組む公明党の迷走ぶりが顕著になっている。自民党旧安倍派の会計責任者の衆院予算委員会への参考人招致をめぐって、当初は招致に賛成する考えを示していたが、1月30日の採決では退席に転じた。公明党が実現を求める選択的夫婦別姓をめぐっても、斉藤鉄夫代表は朝日新聞のインタビューで、自民党と政策で一致できなかった場合の連立離脱をチラつかせたが、その後にトーンダウンした。
公明党は昨年秋の衆院選で大敗したこともあり、今夏の都議選と参院選を最重要視している。そのため、いわゆる「裏金問題」や選択的夫婦別姓問題では自民党との違いをアピールするため、参考人招致では賛成しようとした。自民党内では、
「宗教法人法改正をめぐり、支持母体である創価学会の池田大作名誉会長の国会招致が議論になったことを、公明党は忘れているのか。賛成多数でゴリ押しするなんて論外だ」(閣僚経験者)
との強い反発が起きた。結局、退席に転じたのだが、自民党内には不信感が残った。
選択的夫婦別姓についても、斉藤代表は朝日新聞に対し、こう言い切っている。
「『何があっても自公連立は崩しません』ということはない。我が党が譲れないもので意見が対立し、合意が得られなかった場合に、連立離脱というのはあり得る」
ところが、1月31日の産経新聞のインタビューでは一転。
「自民と公明は、野党の時も一緒に頑張ってきた絆がある。ひとつの法案で協議が決裂したら連立離脱だというような関係ではない」
とても同じ人物の発言とは思えないほど、ブレているのだ。この豹変ぶりを、自民党保守系議員が酷評する。
「創価学会の中には夫婦別姓よりも、通称使用拡大の方が多いということがわかったからではないか。斉藤さんはいい人かもしれないが、政治センスはゼロだ」
石破茂総理は斉藤代表との意思疎通を密にすることを心がけているが、これでは混乱するばかり。石破総理が毛嫌いする安倍晋三元総理は学会ルートを持っていたが、石破総理も真剣に考えた方がよさそうだ。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)