弘法は筆を選ぶ。2月9日のG3・きさらぎ賞(京都・芝1800メートル)で2番人気に推されながら4着に終わったショウヘイ(牡・友道)に騎乗したのは川田将雅。彼には意外なこだわりがある。騎乗で使用する道具の大半が、オーダーメイドなのだ。ターフタイターが解説する。
「川田の場合、自分専用に作っていないのは鞍ぐらい、という話です。最高のパフォーマンスを求めるため、自分の動きや体だけでなく、癖にも合致するような自分仕様らしいですよ」
例えば勝負服がそうだ。通常は生地やサイズが同じものを厩舎側で用意し、騎手が着用する。だが、騎手経験がない人が製作した既製品の場合、どうしても微妙な動きに制限がかかるケースが出てくる。そのため川田は、自分が多く乗る馬主の勝負服は自分用に製作するという。
手袋にもこだわりがある。前出のターフライターによれば、
「普通は黒の既製品ですが、川田は雨に濡れても滑らない素材のものを使用しています。本来ならば素手で手綱を握るほうがいいのですが、多湿な上に騎乗数が多い日本で、それは難しい。そこで視覚的に素手で握っているような感覚を大事にして、肌色のものを使用しているのです」
さらに騎手が着用する勝負ズボンやヘルメットの製作にも携わっている。厩舎関係者が言う。
「今までは製作者側に現場の騎手の意見が伝わる機会はなかったんですよ。製作者は騎手経験者ではないでしょ。だから微妙な感覚のズレがあるのは仕方がない。ですが、その微妙なズレを、川田が取り持つような形となったわけです」
競馬はそれこそ数ミリが勝敗を分ける世界。騎手は気分良く馬に乗るため、自分に完全にフィットして安全面が配慮されるオーダーメードの道具製作が持つ意味は大きい。
スポーツの世界では一流選手になればなるほど、道具へのこだわりは強い。日本を代表する騎手である川田もやはり、超一流のアスリートということだ。