年明け一発目の重賞・京都金杯(GⅢ)で8歳馬サクラトゥジュールを勝利に導いたレイチェル・キング騎手には恐れ入った。パトロールビデオを見るとよくわかるが、直線で前にいたセオとシャドウフューリーの間をこじ開けるように抜け出している。結果、川田将雅が騎乗した1番人気馬シャドウフューリーは外に弾かれて、6着となってしまう。
キングは外側に斜行してシャドウフューリーに被害を与えたことにより、過怠金5万円を支払うことになったのだから、フェアな騎乗とは言えない。レース後、不利を受けた川田はかなり憤っていたという。
しかし、ひとかたまりになって進んでいくヨーロッパの競馬では、馬群を割るのはよくあること。イギリス出身の彼女は、それほど悪いことをしたとは思っていないだろう。事実、彼女は「プラン通り。最後は勝負強い末脚を引き出せた」と満足気だった。
一頭分空いたスペースに飛び込んでいくのは度胸のいることだが、それを瞬時にして行ったキングは、実に肝っ玉の据わった騎手だ。そのファイトあふれるプレーは、日本の騎手も見習ってほしいと思う。
凄いのは度胸だけでない。追う技術においても、男性のトップジョッキーに全く引けをとらない。それをまざまざと見せつけたのが、昨年1月のAJCC(GⅡ)だった。チャックネイトに騎乗した彼女は、半馬身ほど前に出たボッケリーニを、ゴール前で一気に差し返してみせたのだ。それはまさに「すげえなぁ」という声が出るほど、迫力のあるアクションだった。以降、キング姐さんの存在は競馬ファンのみならず、競馬関係者の心の中にも焼きついていくことなる。
馬券的に言うならば、芝のレースで狙ってみたい。彼女が拠点としている豪州では芝のレースがほとんどということもあって、やはり芝だと安心して見ていられる。事実、日本での重賞3勝は全て、芝でのものだ。
逆に言えば、ダートではあまり信用できない。例えば1月6日の中山で3つのレースに騎乗したが、全て着外に終わっている。枠順や流れが向かなかったこともあるが、上手にレースを運べていないように見えたのだ。特に苦手意識はないようだが、思うようにいかないのである。ダートで人気馬に騎乗した時は、割り引いて見た方がいいだろう。
ともあれ、3月4日まで短期免許(騎乗は3月2日まで)を取得しているので、何勝するか楽しみだ。
(兜志郎/競馬ライター)