「彼のストレートの球速は100マイル(約160キロ)に達する。ワクワクするね」
シアトル・マリナーズのダン・ウィルソン監督はそう言って、藤浪晋太郎に期待を寄せている。マリナーズとマイナー契約した藤浪が、春季キャンプで上々の仕上がりを見せているのだ。ブルペンではこの時期、早くも最速98マイル(約158キロ)の剛速球を披露し、ウィルソン監督の頬を緩ませた。
昨季の藤浪はメッツと単年契約を結んだものの、オープン戦から制球難に苦しみ、早々とマイナー降格。3Aでは14試合に登板して1勝0敗、防御率10.95、12回1/3を投げて27四死球と結果を残せず、11月1日にFAとなった。
渡米3年目をまた新天地で迎えることになり、崖っぷちに立たされている状況は変わらないものの、
「ストライクゾーンを支配して、バッターにプレッシャーをかけてほしい」
と、ウィルソン監督はどこまでも前向きだ。もっとも、これまで幾度となく期待を裏切られてきたファンは辛辣だ。
「ポテンシャルで飯を食う男」
「カタログスペックだけ見たらワクワクが止まらないのはわかる」
「ストライクゾーンどころかバッターボックスを支配する」
そんな評価が渦巻いているのである。
藤浪は2020年に最速162キロを公式に記録しているが、阪神在籍時には札幌ドームの電光掲示板に「168キロ」の数字を表示させ、スタンドをどよめかせた。実はスタッフのトラックマンでも168キロと計測されていたのは、ファンの間では有名な話だ。
確かにスペックだけを見れば、大谷翔平や佐々木朗希にも決して引けを取らないどころか、それを上回るが、大谷人気で野球を見るようになった若い世代は、なぜ藤浪が過大評価されているのかわからない。今季、自慢の速球でメジャー昇格を果たせば、その時には藤浪の実力に驚かされるのではないか。
一時は「投げる国際問題」などと揶揄された藤浪。捲土重来となるか。
(ケン高田)