石破茂首相が自民党衆院議員1期生に10万円分の商品券を配っていた問題で、政治評論家の田﨑史郎氏は、石破首相が退陣に追い込まれ、高市早苗前経済安全保障担当相が新総裁に選ばれたとしても、少数与党のため首班指名で勝てるか疑問視した。
田﨑氏は「モーニングショー」(テレビ朝日系)に出演した中で、こう言っている。
「例えば自民党の新総裁に、極めて右寄りな人が選ばれたとします。そうしたら、野党が結束する可能性がある。そうした場合、自民党は政権を失ってしまう」
「極めて右寄りな人」が高市氏を指していることは、田﨑氏のこれまでの言動からも明白だ。昨年9月の自民党総裁選の際、決選投票で高市氏が勝つと予想したが、外れた。田﨑氏はその理由について、こう分析していた。
「ある候補と話したら、高市さんが総裁になるとヤバイことになる、と。それが今、うねりになってきていますよ、って言われたんです。『反石破感情』があるんですけれども、それを上回って、高市さんにすると日本がおかしくなる、と。いちばん響いているのは、靖国神社参拝を総理になっても続けると言われたでしょ。実際に参拝すれば中国、韓国が反発するのは目に見えているわけです」
田﨑氏は「高市総裁では秋の総選挙で穏健な保守票が、野田佳彦代表率いる立憲民主党に流れる」と予想したが、実際には石破総裁で戦った結果、自民党は大敗し、過半数を割り込んだ。
ここで再び「右寄り」論理を持ち出しても、説得力はない。にもかかわらず、自民党内の動きは低調だ。それどころか田﨑氏が言うように、高市氏を総裁に選んだとしても、首班指名で野田氏に負けてしまうのではないか、とみている議員が少なくないという。
ある若手議員が、危機感をあらわにする。
「石破首相、森山裕幹事長ら党幹部に共通しているのは、自身の選挙は強いこと。どうも楽観的すぎる。だから田﨑氏らはしきりに石破降ろしは起きないと言っている。でも、このままズルズルと石破政権が続けば、参院選は大惨敗だ」
誰がいつ「決断」するのか。いや、しないのか。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)