石破茂首相が4月7日夜の、米トランプ大統領との電話会談を受けて、米側との交渉役を担う担当閣僚として、側近の赤沢亮正経済再生担当相を早期に訪米させる意向であることに対し、自民党内からは失望の声が広がっている。
石破首相には党内から、トランプ政権との交渉経験がある茂木敏充前幹事長の起用を求める声が寄せられたが、政府関係者によると、
「首相は首を縦に振ろうとはしなかった。安倍晋三元首相に対する批判を繰り返してきた石破首相としては、安倍政権でトランプ政権側と交渉した茂木氏や、安倍氏側近の萩生田光一元政調会長、西村康稔元経産相らを使うことはしたくなかったのだろう。たとえ彼らが、第一期とはいえトランプ政権との交渉の経験値があったとしても。結局、数少ない側近の赤沢氏しか頼る人がいない事実は、石破政権の人材がいかに不足しているかを露呈した」
茂木氏は東京大学を卒業後、ハーバード大学ケネディ行政大学院を修了し、マッキンゼー・アンド・カンパニーでコンサルタントの経験がある。トランプ大統領には「タフネゴシエーターだ」と認定された。
立憲民主党の野田佳彦代表も茂木氏の起用を求め、
「挙党態勢があって、その後に挙国態勢じゃないか。野党の力を借りようとする前に、自分の党の力を総動員すべきではないか」
とアドバイスしていたが、石破首相は頑なな姿勢を変えなかった。担当閣僚の指名問題は、石破首相の狭量さを浮き彫りにした。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)