4月21日に88歳で死去したフランシスコ・ローマ教皇(在位2013年~2025年)の葬儀が4月26日、バチカン市のサンピエトロ広場で執り行われたが、その参列者がすごかった。ざっと見てみよう。
アメリカ=トランプ大統領、バイデン前大統領/イギリス=ウィリアム皇太子、スターマー首相/フランス=マクロン大統領/ドイツ=シュタインマイヤー大統領、ショルツ首相/イタリア=マッタレッラ大統領、メローニ首相/スペイン=フェリペ国王/ウクライナ=ゼレンスキー大統領/フランシスコ教皇の出身地アルゼンチンのミレー大統領ら、南米各国の大統領/国連のグテーレス事務局長…。
実に130もの外交団と25万人の市民が、遺体が安置されたサン・ピエトロ大聖堂の内外に集まったのである。
中でも週末、世界を仰天させたのが、大聖堂の洗礼堂で行われた15分間のトランプ×ゼレンスキー会談だ。ゼレンスキー大統領の後ろにあった絵は、イタリアのバロック画家カルロ・マラッタによる「キリストの洗礼」、つまり後ろにはキリストがいることを暗喩。トランプ大統領は神とキリスト、聖ヨハネ、聖霊に向かって語りかけるという、絶妙な椅子の配置だった。これではトランプ大統領も、2月末の決裂会談のような罵倒や嘘偽りを並べたてたり、高圧的な態度をとることはできない。
その後もトランプ×ゼレンスキー×仏マカロン大統領×英スターマー首相がフラッと4者会談を始めるなど、G7よりすごいことになっていた。ローマ教皇に各国首脳を集結させる影響力があるのか、日本人にはあまりピンとこないだろうが。
ローマ教皇は13億人のカトリック信者を束ねるだけでなく、新型コロナ禍では世界中の教会が、貧困者に食糧と薬を配布。信者がボランティアで患者の看病にあたった。パレスチナでは軍事紛争後も中立的なカトリック教会が難民救済にあたっており、赤十字や国境なき医師団に並ぶ慈善医療団体の顔を持つ。
さらにソ連崩壊後、諜報組織KGBの残党はロシア正教の神父に姿を変え、諜報活動を続けていると言われる。この諜報員を監視する立場にあるのが、1000年前に東方教会と分裂したカトリックの総本山、バチカンだ。ローマ教皇の元には世界中の教会、神父から情報が集まってくる。
ロシアと中国、イスラエルに公然と睨みをきかせ、カトリックの「教義」として政治的発言も許されるのだから、欧米から南米、アジア、アフリカまで各国首脳への影響力を発揮するのは当然だろう。
プロテスタント信者の石破茂首相は、自民党最高顧問の麻生太郎氏がカトリック信者であるにもかかわらず、岩屋毅外相を葬儀に派遣した。もし麻生氏が葬儀ミサに参列していたら、先の4者会談に加わったことだろう。石破首相のやることなすこと、国益を損ねている。
(那須優子)