薄毛、脱毛を防ぎ、育毛・発毛を促す、育毛剤や方法は数多く出ているが、中にはかなりの根気を要するものもあり、続かないという話も聞く。そんな中、灯台下暗しというべきか、毎日使うブラシを替えるだけでも、毛が生えるという説があった。それが猪毛ブラシだ!
猪毛ブラシの効用はかねてから言われていたが、今は故人となられた東北大学の後藤幸正名誉教授が、1981年の工学部教授時代に出版した著書「からだを活性化する本」(光文社刊)で、自身の体験をこのように述べていた。
〈自分の禿頭を実験台にして硬いタワシで頭をこすり、たたき、髪の毛を引っ張り続けた。初めは貴重な毛が抜けドキッとしたがめげずに続けたところ3か月後に短い毛が生えてきて、実行後1年で“黒い髪の毛がワーッと生え”てきて髪の量は以前の3倍になった〉
教授はその理屈をこう続けている。
〈原始人は髪がフサフサだった。原始時代、髪の毛は雨や日光から頭皮、頭部を守っていた。また、木や草や、他の動物たちとのかかわりの中で、ひっぱられたり、こすられたりしていた。近代になって、髪の毛の刺激が少なくなって、それが血行を悪くして、細胞が“髪の毛はなくても大丈夫”というふうに思うことで、ハゲたりするのではないか〉
細胞は、刺激がなくなったり、まったく使われないと弱る。頭皮の細胞も同様。適度な刺激が体を活性化する。故・後藤名誉教授の発毛法は「スパルタ式発毛法」とも言えるもので、“髪の毛を甘やかさない”というのが基本なのだ。ただタワシでこする方法は万人には向かない。皮膚を痛めたり逆効果になりかねない。
そこで推奨しているのが猪毛ブラシなのだ。猪毛は毛が太く、剛毛。このブラシでのマッサージは頭皮を刺激し、毛根周辺部の新陳代謝を高め、血流をよくするので皮脂や汚れが落ちやすくなる。さらに、猪毛には油分が多いため静電気が起こりにくく、髪に自然なツヤを与える効果もあるのだ。髪のツヤをたもちながら、その他の育毛法とあわせていけば「万全」だろう。