05年11月に発覚した「耐震偽装問題」。元一級建築士の姉歯秀次氏は、マンション販売会社「ヒューザー」などの圧力により、偽造に手を染めたと告白。渦中の小嶋進社長は、「ふざけんじゃねえよ」と国会での答弁で怒りをぶちまけ、物議を醸した。あれから、6年余り──。かつての事件の主役は、今、何を思うのか。
ウソ八百に怒りが収まらず…
「偽装が発覚した時は、まさに青天の霹靂だった。はっきり言ってこれじゃあ、地震が起きてマンションが潰れて人が死んだら、結果として私は人殺しになってしまう。殺人マンションとは、自分で言ったんですが、殺人マンションになってしまう、という思いだった」
最盛期には、年商120億円の売り上げを誇っていた中堅マンションデベロッパー「ヒューザー」。その社長だった小嶋進氏は、今も当時の様子を生々しく振り返る。
05年11月17日、国交省は、元一級建築士の姉歯秀次受刑者(54)が、構造計算書を偽造していたことを公表した、いわゆる「構造計算書偽装問題」。震度5強で倒壊のおそれのあるマンションが、平然と売られている──。未着工を含め、複数のマンションの建築主であった「ヒューザー」にも厳しい視線が注がれた。
しかし、小嶋氏は11月22日の記者会見に現れると格好の“餌食”となった。マスコミ陣を前に、当時、話題の中心であったホリエモンこと堀江貴史氏にみずからをなぞらえ、
「私は小嶋でございますけど、『オジャマモン』ということで、ぜひスタジオに呼んでください」
と卑下したつもりが、かえって顰蹙を買った。
しかし、疑惑の目は「ヒューザー」とその社長である小嶋氏にも向けられた。11月25日に国交省で開かれた姉歯氏に対する聴聞会で、姉歯氏はヒューザーなど3社のデベロッパー業者の名前をあげ、「建設コストを下げる設計をするよう指示された」と証言。耐震偽装問題の“黒幕”として脚光を浴びたのだった。
そして小嶋氏のイメージを決定づけたのが、05年11月29日、国会の衆議院議員・国土交通委員会における参考人招致でのことだった。厳粛な場面にもかかわらず、小嶋氏は、
「何言ってんだよ! ふざけんじゃねえよ、本当に。この野郎!」
と、並いる国会議員の前で、こう怒声を発したのだ。さらには続けて、
「国交省もいいかげんにしてほしいですね。まったく」
なかば、開き直ったとも言える態度に、マスコミのバッシングがいっそう激しくなっていったのだ。
小嶋氏の言い分を聞こう。
「ふざけんじゃねえよ、この野郎」発言は、当日に参考人招致されていた、建築基準法の確認検査機関だったイーホームズの藤田東吾社長へ浴びせかけたものだった。藤田社長は、国交省へ偽装の事実を報告したいわば張本人。参考人の答弁として、耐震偽装発覚以前の05年10月27日での藤田社長との協議の内容を巡ってのことだった。藤田社長は小嶋氏から、偽造公表の際に“圧力”をかけられたと主張したのだ。
小嶋氏は言う。
「(イーホームズが国の検査機関として認定された)みなし公務員にあるまじき言動に純粋に怒りが収まらなかった。秘密の暴露ならまだいいんです。ところが、あることないことウソ八百を並べ立てて、人を悪者に仕立て上げて‥‥」
両者の言い分は最後まで平行線だった。
さらに、告発した国交省に対しても、いまだ怒りは収まらない。
「国交省が作成した、耐震偽装物件の一覧表に、ウチが販売していないものまでウチが販売したように書かれていて、あたかもたくさんやっているような印象を与えるものでしたから『しっかりしてくれよ』と。そういった前後の文脈が割愛されて報道されたので、あたかも逆ギレしたように映ってしまった」
まさに、天国から奈落の底に落とされた小嶋氏の流転は、ここから始まるのだ。
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