この夏、新潟を巡るアイドルの戦いがますます熱さを増している。その火付け役となったのが、10月1日に専用劇場をオープンしてデビューするNGT48。そして迎え撃つのは、この7月20日に結成13年目の誕生日を迎えた地元出身の「Negicco」(ネギッコ)である。
このNegicco、全国に数百あるローカルアイドルのなかでも最も成功しているグループの一つとして、アイドルファンには広く知られた存在。Nao☆、Megu、Kaedeの3人はにいがた観光特使も務めるなど、新潟では知らぬ人のいないアイドルとしていまでも地元密着型の活動を続けている。
一方、国内で5番目のグループとして今年1月に結成がサプライズ発表されたNGT48。3月には主要メンバーが新潟県知事と新潟市長を表敬訪問し、5月には専用劇場の場所を発表するなど、デビューに向けて着々と地歩を固めている。この8月にはいよいよ、第1期メンバーを決める最終選考が行われる予定だ。
この両者、一般的な話題性ではNGT48のほうが上回っているが、こと新潟における存在感はNegiccoのほうが上のようだ。たとえば前述の県知事表敬訪問では、新潟アイドルの先輩としてNegiccoが同席。地元名産のいちご「越後姫」を48メンバーにプレゼントするなど、明らかに新潟代表としての役割を果たしていた。
また地方のエンタメシーンでは、いかに地元密着スタイルを打ち出せるかがなにより重要だが、この点でもNegiccoは先を行っている。それは7月21日に公開された新曲「ねぇバーディア」のMVを見れば明らかだ。
新潟市内の各所でロケを敢行した同MV。Nao☆が若者に人気の上古町商店街を散策すれば、Meguは上越新幹線の終着駅である新潟駅を闊歩、そしてKaedeは自らが特定研究員を務める新潟薬科大学のキャンパスに赴くなど、新潟県民の琴線に触れるシーンがてんこ盛りなのである。
そして3人はそれぞれ関越道、新幹線、そして空路を利用して東京に移動。ワンマンライブを開催する日比谷公園に集合というトラベルストーリーになっている。新潟をホームに首都圏の大会場に出陣するという絵は、たとえて言えばJリーグのアルビレックス新潟がFC東京や浦和レッズと戦うようなもの。まさに新潟県民のハートを鷲掴みにする見事な演出と言えそうだ。
だが、NGT48にもストーリー性がないわけではない。これまで48グループには、チーム8の佐藤栞を除いて新潟県出身者は一人もいなかった。それゆえ10月に劇場デビューする1期生は「新潟発のアイドル」として、新潟を発信していくパワーを大きく期待されているのである。専用劇場が新たな観光スポットとなる日も近いだろう。
ともあれ、攻め入る側と迎え撃つ側。これが戦国時代であれば生き残れるのは片方だけだが、アイドル戦国時代では両方が勝ち残る可能性もある。もしそうなれば、本当の勝者は彼女たち2組を擁する新潟県ということになるのかもしれない。
(金田麻有)