タクシー会社が前代未聞の心霊ツアーを企画したところ、予約が殺到している。運転手も近寄りたくない恐怖スポットを、一足先に現場ルポした!
「企画を立ち上げたのは、社長の発案なんです。乗務社員はお客様から町の怖い噂話を耳にするので、その情報をもとに夏の風物詩である“肝試し”ツアーを組んでみようと思ったのです」
そう語るのは、タクシー・ハイヤー営業を行う三和交通の広報担当者である。
7月24日から9月4日までの毎週金、土曜日に運行される期間限定の「心霊スポット巡礼ツアー」。神奈川県の新横浜駅をスタートして、「少女の霊がいるガード下」や「窓から複数の霊が顔を出す廃墟ホテル」など、厳選した5カ所を案内するという。発表されたツアーの詳細には、
〈正直何が起きるかわかりません‥‥。心霊現象に関わる責任は取りかねますので、予めご了承下さい〉
と明記されており、見える人には見えてしまう場所のようだ。そんな中、ツアーはまだ始まっていないのに、すでに青ざめているのは、発案者の吉川永一社長だとか。
「これまで会社のホームページは、1日500件のアクセスでしたが、(ツアー発表以降は)1万件を超えています。3日間で予約は完売して、キャンセル待ちは60件以上。社長は『このツアーに6000円も払って、参加する人はほとんどいないよね』と企画倒れになりそうだと笑っていたのに、あまりの反響に本人がいちばん困惑しています」(前出・広報担当者)
巡礼先は、あらぬ噂が立って地域住民に迷惑をかけないように伏せられている。町なかで同社のタクシー運転手に聞いても、
「知らされていません」
と答えるばかり。
そこで聞き込みを開始。程なくして地域で有名な「廃墟ホテル」がわかったので、さっそく肝試しに出かけた。
現場は、新横浜駅から車で10分ほど。周辺に住宅はなかったが、夜遅い時間でも交通量が多い道路沿いにそれはあった。どうやら以前はラブホテルとして使用されていたようだ。
1階は駐車場スペースになっているが、酒の空き瓶などゴミが散乱している。古びた壁はスプレーで落書きされ、部屋の窓ガラスは割られていた。新横浜駅前で中年男性に聞いた話によると、
「殺人事件があったという噂話は聞いたことがあります。10年くらい前に潰れたのですが、あの周りには他にもホテルがあったのに、不思議とそこだけは取り壊しをせずに廃墟として残っているんです」
ホテルの窓に霊の姿があったという目撃談が広まり、心霊スポットとして知られるようになったようだ。
道路側から窓をジッと見てみる。だが、幽霊を確認することはできなかった。
続いて、もう1カ所、聞き込みの最中に思い当たる節があるとして新横浜在住の男性が教えてくれた「ガード下」に向かった。
そこは、かつてカーブミラーの下で子供を巻き込む事故が発生してから、付近で人身事故が多発。それを理由に地元自治体が封鎖したという。
「誰もいないはずなのに、少女の笑い声やはしゃぐような声が聞こえるそうです」(新横浜在住の男性)
現場に着くと、確かに通行止めになっていて、人通りはなかった。一見、ごく普通のガード下の光景だが、それまでシャツが汗でべったりと背中に張りつくほど蒸し暑かったのに、ひんやりとした空気が流れている。
その場で立ち止まり、耳を澄ませてみる。
「‥‥‥‥ウゥ」
風の音に混じって、少女らしき甲高い声が聞こえてきた、ような‥‥。すると突然、左肩がズシリと重くなり、冷や汗が止まらなくなった。これ以上ここにいるのは危険と判断して、その場を後にする──。
人気ツアーの予約が取れたお客さんは幸運なのか、それとも知らない世界に導かれてしまうのか‥‥。