病院に行き薬をもらうと必ず服用についての説明を受けるのだが、服用時間は注意しても、食事の内容は案外気にとめない。しかし薬は非常にデリケートなもの。一緒に取る食べ物によっては「毒」に化けるのだ。
多数の著書がある齋藤勝裕理学博士は「毒と薬のひみつ」(サイエンス・アイ新書)でこう述べている。
〈複数の薬を服用することで、薬の効果が消えてしまう、逆に効果が必要以上に強まってしまうことは広く知られているが、これは薬と食品でも発生する。健康にいいと言われている一般的に口にする食品でも重篤な悪影響が出る〉
そしてその食品が納豆であり、ステーキであり、フルーツだというのだから怖い。純正堂漢方薬局の渡邉正司薬剤師が説明する。
「まず納豆。含まれているビタミンKが血液を固まりにくくする薬(ワルファリンカリウム)の作用を弱めてしまう。ワルファリンカリウムは心筋梗塞の薬。また、マグロ、ブリ、サバ、サンマ、イワシ、カツオなどの青魚と、人気の漢方薬である葛根湯の組み合わせは×。青魚に含まれているヒスチジンは体内でヒスタミンに変化する。葛根湯はヒスタミンを体内にため込む働きがあるためヒスタミン中毒を起こしてしまうことがあり、青魚を食べた後に飲むと、顔面紅潮、発汗、嘔吐、頭痛という食中毒と同じような症状起こすことがあります」
他にも解熱鎮痛薬や風邪薬の主成分であるアセトアミノフェンが胃の中で糖分と混ざると糖分と薬が吸着してしまい、熱が下がらず、痛みが引かなくなる。
風邪の時はケーキ、アイスクリーム、サイダーなどの糖分を多く含む炭酸飲料はNGなのだ。また、アスピリンやイブプロフェンは胃を荒らしやすい成分。胃に刺激を与える食材(にんにくや唐辛子)と一緒に飲むと、胃がむかついたり、痛みが走ったりすることがある。
ステーキは良質のたんぱく質が豊富だが、アミノ酸が胃腸壁からの吸収を妨げるため、高血圧症に処方される薬の効果を低下させる。あるいは柑橘類、りんご、ほうれん草、人参などの果物や野菜100%ジュースなど、アルカリ度の強い食品と一緒に不整脈治療剤を服用すると、血中濃度が上昇し、心停止することもある。さらにはカレーも要注意。糖尿病治療薬を飲んでる人は薬の血中濃度が上昇し、胃腸障害、発疹、低血糖などの副作用が起こることがあるからだ。先の「毒と薬のひみつ」にはこうも書かれている。
〈どんなものも、猛毒にもなれば良薬にもなる。副作用のない薬はなく、量や食べ合わせに無関係な毒もない〉
医院で薬をもらう、あるいは薬局で薬を購入する際はくれぐれも薬剤師とじっくり話をすることが肝要だ。
(谷川渓)