テリー その後も「スター千一夜」など多くの人気番組に携わっていますけど、思い出深い番組といえば?
三宅 たくさんあるんですが、しいてあげるなら「欽ちゃんのドンとやってみよう!」ですね。この番組で大将(萩本欽一)に、テレビのノウハウを叩き込まれました。
テリー 具体的には、どんなことでしょう。
三宅 ご存じのようにあの番組は、視聴者から送られてくるフリとオチのある2行のコントを紹介していたんですが、それはつまり視聴者参加型番組であると同時に、全国に放送作家を抱えたということなんです。
テリー そうか、番組に使うギャグ原稿を、自動的に集められるんだ。
三宅 そうなんです。それでのちに、スタジオでウケたネタを一般の人にも聞いてもらおうということでロケに行くんですが、急に欽ちゃんがハガキを読んでも誰も笑わないわけですよ。
テリー そうですよね。
三宅 「何でだろう?」と思って、帰ってきてVTRを観たら「笑わないほうがおもしろい」ってことに気づいたんです。
テリー というと?
三宅 つまり、ドッキリ企画みたいなもんですよね。ハガキのギャグを聞かされる一般の方が素直に笑うより、むしろ意味がわからなくて困惑したり、笑わないほうが観てる側にとってはおもしろいんです。
テリー その笑いの目線は、当時で考えるとかなり早いですね。
三宅 その頃、大将と長嶋(茂雄)さんが親しいので、「長嶋さんにもハガキのギャグを聞いてもらおう」と、巨人戦のデーゲームにロケに行きまして。本当に、練習グラウンドでハガキを読んだんです。その時は「生徒の頭が悪すぎてサジを投げた先生に、生徒がフォークを投げ返した」というネタだったんですけど、やっぱり意味が伝わらなかったみたいで、「う~ん、そうですか、抵抗ですね」ってひと言。もう、こっちは大爆笑。
テリー ミスター、さすがのリアクションだ(笑)。
三宅 そういった、現場と観る側のギャップで笑いが生まれるということを、この番組で学びました。
テリー なるほど。
三宅 あと「母と子の会話」というコーナーがあって、これは大将が母親役、ゲストが子供役を演じるんですね。
テリー ふすまを開けたゲストが「母ちゃん、○○」って言うことに対する欽ちゃんの返しが、オチになるんですよね。
三宅 そうです。で、和田アキ子さんがゲストだった時、入ってくるなりセリフを忘れて、「あれ、何だっけ?」って引っ込んじゃっった。そこで客席はドッとウケたわけです。それまでのバラエティだと、これはNGなんですよ。
テリー 普通なら「もう1回」ってなりますね。
三宅 でも、そこは大将ですから「覚えとけよ!」とかツッコんで、どんどん笑いに変えていくんです。アッコさんも笑いすぎてマツゲが取れたり、アイシャドーが落ちて目が真っ黒になったり。最後にはふすまを勢いよく開けすぎて、セットが倒れたんですよ。
テリー トラブルもそのまま見せる。まさにドキュメンタリーの笑いですよね。
三宅 まさに! そういった“今、目の前で起こっているおもしろいこと”をいかに伝えるかがテレビの笑いなんだ、とこの仕事で気づかされました。それがのちの「ひょうきん族」にもつながっていくんですね。