食品ゴミの再食品化は、食品業界で「あって当たり前、ないのが不思議」と言われてきた。その一部が明るみに出たのが、今回の廃棄食品横流し事件である。
カレーチェーン「CoCo壱番屋」を展開する「壱番屋」(愛知県一宮市)が、冷凍ビーフカツ4万枚(5.6トン)を産廃処理業者「ダイコー」(同県稲沢市)に廃棄委託。そのビーフカツが麺類製造業「みのりフーズ」(岐阜県羽島市)に横流しされ、愛知、岐阜、三重県内のスーパーで販売、また弁当工場でも使われていた。つまり、消費者はゴミを食わされていたわけだが、北関東の産廃処理業者に言わせると、「そんなことは日常茶飯事」だという。
「産廃(ゴミ)を口に入れていない日本人は1人もいないはず。すべてとは言わないけど、ラーメン店のスープに使われる鶏ガラも赤ちょうちんや居酒屋の焼き鳥も元をたどれば大半が産廃だ。卵を産まなくなった廃鶏を使っているからね。廃鶏は、生きた産廃だから」
採卵鶏は、1羽が1年間に産む卵の数が330個を切ると、エサ代で採算がとれなくなるため廃鶏として処分されるという。かつて廃鶏は鶏肉専門業者へ直接売り渡されていた。
ところが近年は、食用鶏のブロイラーに押され、養鶏業者は産廃処理業者に逆にカネを払って廃鶏の処分を依頼している。要するにゴミ扱いである。その後は焼却、あるいは肥料にしたりペットフードに加工したり、動物園の肉食獣のエサにするなど、廃鶏の用途はさまざまだが、「そうするのはわずかで、実際は多くが食用に回されている」という。
ある養鶏業者が話す。
「産廃業者に引き渡したら、その先、どうしようと、うちには関係ない。鳥インフルエンザの心配はないと思うが、廃鶏のなかには下痢、便秘、卵詰まり、脂肪過多症などで病死寸前のものが混じっている。箱にギュウギュウ詰めで運ばれるから、肉にされるころは息絶え絶えか死んでいるだろうね」
そうした廃鶏“ゴミ”の焼き鳥は、ブロイラーと違って歯ごたえがあるため、店によっては名古屋コーチンや地鶏に化けたりして、高い値段を吹っかけられる。
一方、鶏卵にも問題がある。生食の賞味期限は通常、採卵から2週間後に設定されており、期限切れのものは加熱調理が必要とされる。ところが、市販の鶏卵には賞味期限が表示されているものの、採卵日表示のものと非表示のものがある。
茨城県内のスーパー店長が打ち明ける。
「非表示のものを割ったら、『中がドロドロで黒かった、臭かった』と客からクレームがつき、現物を持ち込まれたことがありました。ビックリして納品先を問い詰めたら、何店かを転々とした“卸し回し”でした。うかつにも廃棄すべきゴミのタマゴをつかまされていたわけです。以来、その業者は出入り禁止です」
別のスーパーから賞味期限切れのものを返品され、その日付を改ざんし、別の店に卸す。それを繰り返していたというから中身が腐るのは当然である。
「現在は、賞味期限が近づいたものは返品することになっています。返品したものは、格安の量販店や弁当店に回しているようです」