立ち合いから目が離せない「ケンカ四つ」!
白鵬が「左四つ」なら大鵬には90%勝てない
昭和の横綱では「相撲の神様」双葉山と並ぶ大横綱として伝説に残る大鵬。この2人の大横綱を私淑し、王道を行くのが白鵬だ。大鵬と白鵬が土俵で戦ったら‥‥。2人をよく知る相撲ジャーナリストの杉山邦博氏が語る。
想像するだけでワクワクしますね。白鵬は大横綱として王道を歩み続けた双葉山と大鵬のあとを追うように、懸命に土俵を務めています。彼はこの2人に加えて貴乃花も私淑している。いずれも、横綱として王道を歩んだ力士ばかりです。「白鵬VS大鵬」の一番は好角家を沸かせる玄人受けする相撲になることは間違いないでしょう。
NHKの名アナウンサーとして歴史に残る数々の一番に立ち会った杉山氏。大鵬の相撲も全てその目で見たというだけに、その解説には非常にリアリティがある。
2人は「ケンカ四つ」です。大鵬が左四つなのに対して白鵬は右四つ。白鵬は右でも左でも相撲を取れるが、左四つでは十分に力を発揮できません。当然、仕切り、立ち合いから目が離せません。十分な四つになったほうが有利になるからです。立ち合いは激しい前さばきの応酬になるでしょうね。
大鵬はもろ差しを狙い、腕を交差して立つでしょう。現役時代、彼はもろ差しになるのが得意で、非常に巧みでした。交差して当たると、たとえもろ差しになれなくても、十分の左四つになれる。
白鵬は左四つでも取れるが、半身になり、腰高で上体が上がる。左四つでは90%大鵬には勝てません。絶対、右四つになりたいから、右から巻き返しを狙うでしょうね。しかし、大鵬は脇が固いので、そうはさせない。現役時代、大鵬がもろ差しを許した相撲は浮かんできません。
左四つになった大鵬は右上手を引きつけ、左のかいな(腕)を返して寄り立てるでしょう。白鵬はそれを嫌って動こうとするが、大鵬にはすくい投げがある。白鵬の魅力は鋭く左足から踏み込み、左上手を取って前へ出ることになる。
もし、大鵬に左上手を許さず、左から上手投げを打てば、さすがの大鵬も左から落ちる可能性が高い。白鵬にとっては、先に左上手を取ることが大切になってきます。そうすれば、大鵬もアップアップする。
逆に大鵬に先に上手を許すと、ダメです。白鵬は腰をひねりながら、巻き替えしにいくでしょうが、大鵬はその瞬間、強烈な上手投げを打つでしょう。
十番取れば、6対4で大鵬が有利です。それだけ、大鵬に安定感があるということです。