パワーは木製で300ヤード超えのジャンボが上
遼が勝つには「正確なゴルフ」をするしかない!
ツアー世界最年少優勝、世界最年少賞金王など数々の記録を保持する石川遼。それに対して賞金王12回、通算優勝113回の金字塔を打ち立て、日本ゴルフ界をリードしてきたジャンボ尾崎。両者が対決したら、どんな戦いを繰り広げるのか。ゴルフジャーナリストの菅野徳雄氏が語る。
一対一の戦いを見るにはトータルスコアで競うストロークプレーより、ホールごとに勝負を決めていくマッチプレーのほうがいいですね。ジャンボはご存じのようにプロ野球からゴルフに転身した。70年、デビュー戦・関東プロ選手権のドラコンでいきなり312ヤード飛ばした。当時はパーシモンヘッド(木製)の時代で、それまでの常識を覆すパワーヒッターの出現にギャラリーはドギモを抜かれました。
翌71年の日本プロ選手権で初優勝を飾るや、その年5勝をあげ、翌72年は大小合わせて9勝。相手を見下ろすようなゴルフで、アッという間に日本一になった。
しかしロングヒッターの宿命で、ドライバーショットは曲がりも大きく、OBをすると「尾崎ボール」とスポーツ紙に書かれたこともある。しかし、そこからがジャンボの真骨頂。林や崖下に曲げても、わずかな隙間があればどんなところからでもバーディを狙う果敢な攻撃ゴルフで勝ち続けた。一時、スランプに陥って、81年には賞金ランク28位まで落ちたことがあるが、不死鳥のようによみがえり、その後、9回も賞金王になっている。
では、そんなジャンボと戦うには遼はどんなゴルフをしたらいいのか。あの体力(身長175センチ、体重72キロ)では、どんなに頑張っても飛距離ではジャンボにかなわない。飛ばそうとして強振すればショットが曲がるので、そうなるとジャンボの思うつぼです。
圧倒的なパワーゴルフに勝つには「技」を駆使するしかない。例えば、金井清一が72年の日本プロゴルフ選手権で最終日、ジャンボに40~50ヤードも置いていかれながら、競り勝ったことがある。金井ははるか後ろから先にグリーンを捉え、そして長いパットを先に入れると、ジャンボはなかなかバーディを取れなかった。17番ホール、240ヤード以上の距離のあるパー3、金井はバンカーから15センチにつけてパー。ジャンボはグリーン手前からのアプローチが寄らずボギーを叩いて決着がついた。金井は正確なショットとショートゲームでジャンボのパワーを封じ込めて勝ったんです。
昨年、ルーク・ドナルド(英)は飛距離こそ280ヤード台ですが、正確なショットとパットで米国、欧州ツアーの賞金王に輝いた。遼も飛距離は280~290ヤードでいいからフェアウェーキープ率を70%ぐらいまで高める。そして先に打って自分の好きなラインに乗せておいてプレッシャーをかけることが必要です。ジャンボのパワーに勝つには、「正確なゴルフ」しかないと思う。