そして、今や世界的な“金融戦争”の時代に突入した、という物騒な指摘も。
「ヨーロッパへの難民流入問題は手がつけられない状態になっている。そのことはね、株の世界を見ていてもわかります。僕は投資ジャーナルで『アラブダラー』という本を出していたからよく知っているんだけど、アラブの王族がこのところ株を手放している。国より先に王族が売っているんだ。王族といったって、何千人もいる。その彼らが世界中の株を手放しているんだから、これはただごとではないよ。革命が起きたら王族がどうなるか、イランのパーレビやリビアのカダフィの例を見て、彼らは知っているんだ。地下の油田も、革命が起これば革命軍のものになる。そうなる前にバカバカ売っておけ、と。今、世界的な原油安になっているのも当たり前のことなんだよ。日本人は島国根性というか、情報に疎いし、情報を分析する能力もない。EUはいずれ崩壊し、中国、そして最も安い原油を売っているベネズエラが問題になりそうだ。実は、ベネズエラの債務保証をしているのが中国で、中国にはほとんど外貨がないかもしれない。いずれにせよ、世界経済は混沌としていき、混乱に向かって進んでいく。世界的な“金融戦争”の時代になり、否応なく日本も巻き込まれていくことになるだろう」
ところで、中江氏の株の師匠は、高校時代から会員になっていた投資顧問会社、三愛経済研究所の所長だった。
「東京に出てきて、市場新聞、大和証券、野村証券、山一証券などの証券界トップと交流を持った。まだ20代の若造だったが、トップ同士の勉強会にも出席して企業情報を聞き、それをもとに相場観を述べ、的中すると僕の評価は動かしがたいものになっていった。僕に言わせれば、黒田総裁の参謀と言われる連中が描いているのは、頭の中の相場なんだよ。したがって、右肩上がりの時代にはわかるけど、そうでないと、まったく見当違いな読みをする。そこへいくと、僕は小学校の頃から自分でリスクを背負い、コストと能力を駆使して実際に信用取引をやってきた。頭の中だけの世界とは違うんだな」
中江氏は、たまに会う昔の部下に「会長、もう一度返り咲いてくださいよ」と言われることがあるというが、
「それにはちゃんと理由があるんだよ」
と胸を張るのだった。