テリー 板尾さんの話を聞いて、若菜は自分のよさはどこだと思った?
酒井 私のよさ? ないんですよ、たぶん。
テリー いや、あるよ! よさのない人間なんているわけないんだから。
酒井 う~ん、実は今日、それをテリーさんに聞きたかったんですよ。私がデビューしたての頃、なぜかいつも私を、テリーさんの番組に呼んでくださったじゃないですか。何でこんなに個性のない小娘を買ってくれたのか、私の中に何を見つけてくれていたのか、っていうのが、いまだにわからないんですよ。
テリー マグマだよな。
酒井 マグマ?
テリー 若菜には、何かマグマがあるような気がするんだよ。そういう得体の知れない可能性みたいなものが、内面深くに眠ってるというかさ。その後クドカン(宮藤官九郎)脚本のドラマにも出演したけど、彼もそこを感じ取ったから使ってくれたんじゃないの?
酒井 マグマ、今も私にありますか?
テリー あると思うよ。
酒井 ホントですか?(突然涙ぐんで)以前出した「心がおぼつかない夜に」っていうエッセイ集で、テリーさんのことを書かせてもらったんですけど。
テリー うん、読ませてもらったよ。俺を「芸能界の育ての親」だってほめてくれてるんだよな。
酒井 はい、本当にそう思ってるんです。この8年、テリーさんにはずっとお会いできなかったんですけど、その間に「私、もうダメかもしれない」と思うことが何度もあって。でも、目の前にテリーさんが現れないから、「まだ大丈夫、頑張れる」って自分に言い聞かせていたんですね。
テリー ああ、俺が最後の砦みたいになってたのか。
酒井 でも今日テリーさんに会えちゃったんですよ。これは、「最後に会いたい人に会えた」なのか、「自分の再スタート」になるのか、どっちなんだろうってずっと考えていて。
テリー 最後って何だよ。最初に会った頃から、若菜は全然変わってないよ。
酒井 うれしいです! じゃあ、今日を再スタートの日にします!
テリー ぜひそうしてよ。板尾さんの言葉じゃないけど、自分の弱さや嫌いな部分は捨てていかないとな。
酒井 私、昔は気が弱いのに心は強かったんですけど、今は心が弱いくせに、気は強くなってきて。しかも年々、その傾向が強くなっていて。
テリー なるほど。だけど、それは短所ではないよな。
酒井 そうなんですか? 実は、自分でもそんなところは嫌いではないんですけど。
テリー 心の弱さって、つまりは繊細だということだよ。だから、ものの切なさとかさ哀れさとか、他人が感じ取れないものを早く強く感じ取れるんだよ。例えば、桜が散っていく悲しさとかさ。まぁ、だからといって、泣かなくてもいいんだけど(笑)。
酒井 いや、すごくテリーさんにお会いして、話したかったんです。だから何か‥‥(また涙ぐむ)。
テリー 俺も会いたかったよ。でも距離を置いたほうがお互いに成長するかなっていうのもあったんだよな。だから、若菜の作品はいつも見ていて、「頑張ってるな」って思っていたよ。
酒井 ありがとうございます。これからも頑張れるような気がします。