昨秋の発覚以降、球界の根幹を揺るがせてきた野球賭博問題が急展開した。元巨人の笠原将生容疑者とともに、B氏として当初は報じられた斉藤聡容疑者が逮捕されたのだ。メディアで球団の暗部を暴露し続け、“平成の黒い霧事件”を演出したフィクサーの「黒素顔」を、闇博打に溺れた当事者たちと密接な筋から聞き出した。
「2人は一緒にいることが多くて、笠原は斉藤の言うことに『そのとおりです』と何でも追従するほど慕っていた。お互いを『将生』『斉藤さん』と呼び合っていたが、笠原は酔っ払うと『おっさん』と軽口を叩くこともあって、兄弟に近いような関係でしたね」(2人の知人)
片時も離れない2人はくしくも同日に逮捕された。
4月29日、警視庁は元飲食店経営者の斉藤聡容疑者(38)=賭博開帳図利容疑=と、巨人元投手の笠原将生容疑者(25)=同ほう助容疑=を逮捕。昨年10月に発覚した巨人の現役選手による野球賭博事件では福田聡志氏(32)、松本竜也氏(23)が無期限の失格処分、高木京介(26)が1年間の失格処分を受けたが、ついに逮捕者まで出す始末となった。
斉藤容疑者は選手と野球賭博を結び付けた張本人。連日の報道で飲食店経営者「B氏」と報じられてきた人物である。
親密な間柄となった2人の出会いは2013年。当時、斉藤容疑者が経営していた新宿の飲食店に笠原容疑者が客として来たのがきっかけだったという。斉藤容疑者と交流があった賭博仲間が証言する。
「斉藤は他人の悪口を平気で言うようなヤツだったから、親分肌には程遠い性格。けど、巨人の選手の前だと面倒見がよくなる。笠原はまだ若かったから、すぐに信頼したんだろう。2人はギャンブルが趣味で、レートの高い賭け麻雀をよく打っていた。笠原は下手くそで負けると台を叩く癖があったが、斉藤が『叩くな!』と注意すると、冷静になって従っていたな」
「弟」は中継ぎ投手を中心に、巨人の同僚を「兄貴」の店へとせっせと連れて行った。そして14年3月、笠原容疑者は心酔する兄貴に誘われ、野球賭博に初めて手を染めたのだ。事情を知るヤクザ幹部が明かす。
「斉藤が胴元だったような報道があるけど、斉藤は客と胴元をつなぐ『中継』だ。斉藤は上野など都内3カ所の胴元とつながっていた。今回の逮捕を受けて(野球賭博を)ほぼやめちゃったけど、2カ所はバリバリ暴力団の息がかかってて、斉藤はそのうち1つの暴力団の企業舎弟だよ。斉藤自身は元暴走族とかいう話だが、武勇伝なんか聞いたことないね。せいぜいパシリだったんだろうよ(笑)」
笠原容疑者は発覚までの約1年半にわたって最終的に約100万円勝ったと報じられている。一方、斉藤容疑者は順風満帆とはいかなかったという。
「賭博の負けがかさんで、本業にまで支障が出ていた。そこで斉藤は知人に『巨人選手が来てくれるおかげで店が好調でもう1店舗出したいから』と、笠原をダシに3000万~4000万円ほど借りて同じく新宿に別店舗を開店。そればかりか、借金を重ね、八重洲、高田馬場にもそれぞれ1店舗ずつ持つなど事業展開していったんだが、借金の中から賭博に金をつぎ込んでいた。結局、事業資金を返済することはなく、借金漬けとなったまま店舗は全て乗っ取られた。だから斉藤は現在無職なんだ」(前出・賭博仲間)
そんな折に発覚した昨年10月の野球賭博が、斉藤容疑者にとって、逃げおおせない転機となった。
「斉藤が『野球賭博常習者のB氏』と報じられ、マークされたのが大きかったな。もともと自分が賭けで負けると、胴元を売るような人間だったから、いつ警察にしゃべるか怖くて、誰も取り立てに行くことができなくなった。本人もそれを知って『借金がゼロになった。へっちゃらだよ』と豪語してたよ。笠原は銭ゲバの斉藤に利用されたうえに道連れだもんな。被害者みたいなもんだろう」(前出・ヤクザ幹部)