視聴率のためには登場人物に大病を患わせ、しかも医療現場の描写はいい加減。そんなドラマ「ラヴソング」(フジテレビ系)に非難の声があがっている。5月30日放送の第8話では、ヒロイン・さくらの声帯に悪性の腫瘍が発見され、手術を迫られるシーンが放送された。そのエピソードについて医療系のライターが憤慨した様子で語る。
「MRI検査を受けるシーンでは全身麻酔を施していますが、乳幼児でもない限り麻酔を使うことはありません。また、がんの確定診断は病変の一部を採取する『生検』で行い、MRIではがんの広がり具合などを精密に調べるもの。それなのに主治医は『最悪の場合は声帯を摘出しなければならないが、手術で切開してみないとわからない』と説明しており、何のためにMRI検査したのか意味不明です」
さらに呆れるのは、当の主治医がさくらの精密検査結果を福山雅治が演じる臨床心理士にペラペラとしゃべっているシーンだ。さくらの同意がない状況で、家族ではない福山に病状を明かすのは明らかな守秘義務違反となり、刑法第134条(秘密漏示)に該当する犯罪ですらある。つまり「ラヴソング」では、医師が犯罪行為を行う現場を堂々と放送しているわけだ。
そんな描写の一方で、テレビ誌のライターは次回以降の展開があり得ないほどのご都合主義になる恐れを指摘する。
「次回予告では『声が残る可能性は10%もないかもしれない』という主治医の声を紹介。この流れでいくと、さくらの患部摘出手術が成功して健康も声も失われない可能性は100%かもしれませんよ」
回を重ねるにつれ、歌の上手さと笑顔の可愛らしさが評価を高めているヒロイン役の藤原。そんな彼女の魅力をスポイルするあざとい演出が、誰のためにもならないことを制作陣は自覚すべきではないだろうか。
(白根麻子)