人気時代劇「鬼平犯科帳」。火付盗賊改方・長谷川平蔵が好んだのが「甘酒」だったが、この甘酒、実は鬼平の時代から夏バテの特効薬でもあったのだ。
起源は中国。わが国では応神天皇が吉野に行幸されたとき醴酒(こざけ)を献上したのが最初とされている。江戸時代には非常に人気のある飲み物で、1杯4文で町中を甘酒売りが売り歩いていたといい、守貞漫稿には「夏月専ら売り巡るもの」が「甘酒売り」と書かれているように、夏の風物詩。江戸幕府も庶民の健康を守るため甘酒を推奨していたほど、当時から夏バテ防止の飲み物だった。今でも東京・神田明神には「天野屋」「三河屋綾部商店」という江戸時代からの甘酒屋が現存している。西武文理大学客員教授で食文化研究家の永山久夫氏がこう語っている。
「江戸時代、客はショウガのしぼり汁をたらしてもらい、熱々の甘酒を飲む。ブドウ糖やビタミン類、それに発酵によって発生した麹菌や酵母、酵素類が生きているので、夏バテを防ぐスタミナドリンクとしても欠かせなかった」
フードコンサルタントで栄養士の小林久美子氏が、これを裏付ける解説をしてくれた。
「甘酒は米と米麹からできていて、豊富な栄養素が含まれています。ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6などのビタミン類をはじめとして、葉酸、食物繊維、オリゴ糖やシステイン、アルギニン、グルタミンなどのアミノ酸、ブドウ糖がバランスよく含まれている。栄養点滴の成分とほぼ同じなので、『飲む点滴』とも言われているんです。夏場の栄養補給に最適ですね」
常用するなら自分で作るに限る。先の小林氏が教える簡単な作り方はこうだ。まず米麹を用意する。米麹と60℃のお湯(麹100グラムにお湯100CCが目処。比率は好みで)を炊飯器に入れて保温にする。この時、炊飯器の蓋はせず、濡れタオルを被せておく。1日ほどで甘酒ができるが、そのままスイッチを切って蓋をし、一晩置くとさらに美味しくなるという。
「乳酸菌の酸が出て、美味しいうえに栄養価も高まります」(前出・小林氏)
無添加、ノンアルコールなので誰でも飲める。これで残暑も乗り切れる!
(谷川渓)