神長氏は無念の表情を浮かべ、こう語った。
「信じたのが間違いでしたが、5000万円あれば、新たなビジネスを展開できますよね」
繰り返すが、大仁田のプロレススタイルのごとき、こうした一連の「邪道」行為が行われたのは、国会議員の身分にあった時である。
債権回収問題などに詳しいホライズンパートナーズ法律事務所の坂東利国弁護士は、こう説明する。
「ダイプロは12年8月に破産しています。したがって、破産手続き終了に伴い、会社が消滅しているため、貸金債権についても消滅。また、06年4月末の(5000万円振込の)取り引きが事実であるとすれば、会社間の貸金は、商事5年ないし民事10年で時効となります。そのため、消滅時効(債権者の法的な権利が消滅する制度)の要件を満たしていると考えられる。つまり、5000万円の回収は法律上、不可能だと思われます」
また、別の法曹関係者は、
「会社名義になっていますが、本来は離婚の和解金。私用のお金を、自分がコントロールできる同族会社を隠れ蓑にして借り、そこから抜いて、自分の懐に入れる。ほとぼりが冷めるのを待って、ある時、会社を破産させ、逃げたという見方もできます。それを狙ってやったのなら、きわめて悪質なやり口と言える」
当時、ダイプロの取締役に名を連ねた大仁田の親族の一人は現在、大東文化大学法学部の教授職にある。法律の専門家でもあるこの親族に、見解を聞いた。
「当時、私を含めて兄弟、母がダイプロデュースの取締役に名を連ねていましたが、経営には一切携わっておらず、事実関係については一切存じません。その経営者がどなたか存じませんが、その方に対する債務の存在が事実であるなら、弁済すべきと考えます」
何やら人ごとのような感じだが、所属事務所を通じて大仁田にコメントを求めると、対応したスタッフは以下のように語った。
「国会議員時代の金銭トラブル? 当時はお金を持っていたはずだから、そんなことはありえないと思う。そこまで言うのなら、大仁田本人に確認して、連絡しますよ」
だがその後、連絡はなく、あらためて書面で「5000万円の使途」「返済の意向」などについて説明を求めたが、期日までに回答はなかった。神長氏がアキレ返りながら言う。
「卒業プロレスで着用した革ジャンを、大仁田からプレゼントされたことがありましてね。でもある時、『会長、仕事で必要になったので、しばらく貸してもらえませんか』と言われて渡したら、そのまま返ってこなかった。その時々で調子のいいことを言っては甘い汁を吸い、都合が悪くなったら逃げていく。結局、大仁田厚という男はいいかげんなヤツなんですよ」
リングで「子供たちに勇気を与える」とほえる大仁田はその一方で、支援してくれた人物を金ヅルとして利用し、裏切る。そんな邪道人生を、これからも歩み続けるのか──。