迷惑メールの中には、いかがわしい通信販売ページに誘うものも多い。
「以前、多かったのが『コピーブランド品を購入しませんか?』というもの。ただ、偽ブランドが警察などに摘発されたことを受け、その後『BS/CS見放題今話題のカードが価格破壊!!』などのタイトルで誘うものが多くなった。もちろん、ICカードを不正に改竄して有料放送を無料で視聴することは違法行為。そこでサイトをくまなく見てみると、本来、特定商取引法に基づいて記載が義務づけられている運営先の住所がない。さらに、業者名すら書かれていない。で、最後に記された、会社名につながりそうなアルファベット表記を頼りにあらゆる言語で翻訳をかけると、ベトナム語でようやく『北京』という訳が出てきた。つまり、中国人が運営するベトナムのサイトだった可能性が高いというわけです」
また、通販にはアダルト系の商品サイトに誘うメールも多い。ある日、多田氏のもと〈非モテ系男性専用!!ワンプッシュに限界値のオスモフェロンを究極配合!これを女性が吸引することで恋愛脳に変貌!〉というタイトルのメールが。URLをクリックすると、裸の男が立ったまま、片足を上げた女を抱きかかえる、シルエット写真が出てきた。
「メールにはキャバクラ嬢や風俗嬢100人が選んだ香りとあり、もっともらしいモニターの声が多数、掲載されていました」
香水は30ミリリットルの小瓶で3500円。注文し届いた香水をワンプッシュ、仕事の打ち合わせに出かけると、
「相手の方から『昭和初期のトイレの臭いですね。観光地のトイレを使っている気分になります』と辛辣なコメントをいただき‥‥。もちろん女性から言い寄られるなんてことはありませんでしたね(笑)」
さて、やはり迷惑メールで段トツに多いのは出会い系である。多田氏にも連日、
〈玉袋を洗濯バサミに挟みたい痴女〉〈濡らしまくっている発情牝豚〉〈熱い巨根を求めています!!〉といったタイトルのメールが届いたが、
「この種のメールの差出人はたいがい、人妻や若い女性という設定。ところがある時、僕の想像をはるかに超える人物からのメールが届いたんです」
それが「M」と名乗る90歳の女性からだった。
「メールのタイトルは『命には限りがある‥‥その限りが目の前に迫っています』。そこでURLをクリックすると、ある出会い系サイトに飛んで、そのプロフィール写真には老婆の姿がアップされていたんです」
老婆は夫と死別したのか独身で、メッセージには「身寄りのない老人ですが、もしよろしければ話し相手になってくださいね」とある。