「木枯らし1号」よりも先に、永田町では強烈な“解散風”が吹き荒れている。自民党幹部が警戒するのは、自爆寸前の民進党ではなく、衆院補選「2連勝」を飾った小池百合子都知事の動向。「新党」を巡って安倍政権との暗闘が激化する中、小池知事を取り巻く欲望と裏切りの「にんげん相関図」を公開しよう。
「総理のネクタイも緑色でございます!」
シンボルカラーの「緑」のジャケットを着た小池百合子都知事(64)がおどけた口調で話を振ると、
「緑のネクタイをしていますが、朝から青汁2杯を飲んで腹の中から緑になっている」
「あ・うん」の呼吸で応えたのは、安倍晋三総理(62)。約3カ月前の都知事選で「推薦」を巡ってひと悶着あった2人の足並みは、いつの間にかそろっていた──。
10月16日、衆院東京10区補選で立候補した若狭勝氏(59)の街頭演説に、小池氏と安倍総理が駆けつけた。JR池袋駅前には約5000人の聴衆が集まり、「百合子コール」が起こる中、安倍総理は小池氏と固く握手を交わす。
それから1週間後の投開票では、民進党の候補者に3万票近くの差をつけて若狭氏が当選。同日に行われた福岡6区でも、小池氏が応援演説を行った、鳩山二郎氏(37)が当選して自民党が2連勝した。その日の夜、安倍総理は二階俊博幹事長(77)に電話をかけ、
「国民の期待に応えるよう政府と党が一体で頑張っていこう」
と伝えている。「“国民の期待”が選挙を意味するものなのか」と、永田町では「1月解散」に向けて、さまざまな思惑が交錯していく。
「麻生太郎財務相(76)は補選で有権者から一定の信任を得たとして、この勢いなら勝てると踏んで解散をしたがっています。それに待ったをかけているのが、菅義偉官房長官(67)。『新潟ショック』を受けて、議席を減らす可能性があるため、時期尚早と見ています」(政治部デスク)
菅氏をはじめ、自民党関係者に衝撃が走った「新潟ショック」とは、10月16日に投開票した新潟県知事選挙の敗北だ。この選挙は、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働が争点となり、現職の泉田裕彦氏(54)が出馬を撤回したあと、当初、自公推薦候補の森民夫氏(67)以外に候補者がおらず、楽勝ムードが漂っていた。
しかし、これまで国政選挙で4回落選していたが、再稼働に慎重姿勢の米山隆一氏(49)が出馬表明すると、あっという間に情勢調査で接戦に持ち込まれ、慌てて二階氏ら党幹部が現地入り。
「支持団体を回り、『選挙で負けたら原発は動かなくなる』と叱責するような口調で手綱を引き締めていました」(地元紙記者)
しかし、そんな労力もむなしく、5万票以上の差をつけられて惨敗してしまったのだ。
解散に向けて自民党内で議論に上がるのは、小池氏の存在。政治評論家の浅川博忠氏はこう話す。
「自民党は衆院補選で連勝しましたが、何をしたわけでもなく、『小池人気』に便乗して勝てたことは否定できません」
若狭氏は前回都知事選で、党方針を無視して小池氏の応援に回った。冒頭のように安倍総理が、反旗を翻した若狭氏の街頭演説に訪れるのは異例と言えよう。関係修復のアピールに躍起だが、腹には一物あるようで、
「若狭氏の当選が確実とわかったあとに安倍総理は、『やっぱり小池ブームはすごいね~』と茶化したような言い方で関係者に話していました」(政治部記者)
安倍総理の本心は別にして、解散のキャスティングボートを小池氏が握っているのは間違いないようだ。