では、中国はどう対峙するのか──それには「ドイツ」の現状を解説しなければならない。
「ヨーロッパのグローバリズムで、最も得をした国こそドイツです。ギリシャの債務不履行(デフォルト)の原因の一端も、ドイツにある。欧州の多くの国ではドイツが悪者となっています」(渡邉氏)
今年、サッカーの欧州選手権「ユーロ2016」が開催された。ドイツの代表チームは他の代表チームに比べ、はるかに多彩な人種で構成されており、そのことからもドイツがグローバリズムを推進してきたことがわかる。
「孤立を深めたドイツが近づける国こそが、中国。ドイツの中核自動車メーカーのフォルクスワーゲンと中国との関係は、トウ小平(トウの字は登+おおざと)時代からのもの。今年上半期の同社の中国での販売台数は、前年比6.8%増です。両国は金融面でのつながりも深い」(前出・渡邉氏)
「アジアインフラ投資銀行」の設立でも明らかなように、習近平国家主席(63)は中国を中心としたグローバル化志向が強い。両国が接近することで4カ国同盟と対峙する、「枢軸国」化する可能性は十分にあると、前出の渡邉氏は指摘する。
もう一つの大国ロシアはどうなるのか──実は、日・ロの間で、大きな問題が頓挫しつつある。ある自民党関係者が明かす。
「原油価格下落と、14年のクリミア問題を原因とした金融規制で、ロシアはあえいでいました。モスクワのスーパーに商品が並ばなくなったほどです」
そこでロシアが頼ろうとしたのがジャパンマネー。「北方領土返還」のカードを切ってプーチン大統領(64)は、安倍総理との会談を行う構えを見せていた。
「ところが原油価格が上がり、アメリカの政権も変わった。金融規制解除を働きかける糸口が見えたと考え、北方領土問題について態度を硬化してきたのです」(前出・自民党関係者)
ロシアは「連合」「枢軸国」どちらともくみせず、緊張関係を維持しながら独自路線を進むことが予想されている。
では、世界が落ち着くのか、というとそうではない。
「来年、ヨーロッパは選挙イヤーです。フランスのオランド大統領(62)落選は確実視されていて、ル・ペン氏率いる『国民戦線』の声が大きくなっています。当のドイツも首相選挙ですが、フランス同様、脱グローバリズムの勢力が強くなっています」(前出・渡邉氏)
地球を3つに割る激動は、「トランプ大統領誕生」が生んだものばかりではなく、グローバリズムに疲れた人々が求めた「世界再編」の結果でもあるようだ。