海を隔てて日本を挟むアメリカと北朝鮮の駆け引きは、すでに“レッドライン”を踏み越えていた! ミサイル実験を伝える報道だけでは見えてこなかった、我が国に迫る“本当の危機”とは──。今まさに「第二次朝鮮戦争」という最悪のシナリオが進行しようとしているのである。
7月4日(日本時間、以下同)、北朝鮮は今年11度目となるミサイル発射実験を強行した。同日、北朝鮮の国営ラジオ局・朝鮮中央放送は、
「ICBM(大陸間弾道ミサイル)としては発射実験が初成功した」
と報道。すかさずドナルド・トランプ米大統領(71)がツイッターで、
〈この男は人生でもっと他にやることはないのか〉
と揶揄するも、さらに翌日、それに呼応するかのように朝鮮中央通信で、金正恩朝鮮労働党委員長(33)のこんな談話が公開されたのである。
「米帝との長い戦いもついに最後の局面に入った。(中略)我々の戦略的な選択を見せつけられた米国の野郎どもは非常に不愉快だろう。独立記念日の贈り物(=ミサイル)が気にくわないだろうが、今後も大小の贈り物たちを頻繁に送り続けてやろう」
ここに来て、米朝間の緊張はかつてないほどに高まっている。導火線に火をつけたのは、4月7日にフロリダのトランプ氏の別荘で行われた米中首脳会談だった。北朝鮮に詳しい作家の北一策氏が語る。
「トランプ氏は『北朝鮮が100日以内に核・ミサイル凍結を行わなければ、米国は単独でも軍事行動に踏み切る』と中国・習近平国家主席(64)に通達したのです」
明確な期限を設けたことで、米国と北朝鮮の駆け引きは、一気に激しさを増す。4月22日には米国の意を受けた中国が、
「北朝鮮が核プログラムの開発を続けるかぎり、米国の軍事攻撃に対して外交面では反対するが軍事行動には関与しない」
と最後通告。一方、その前後から、北朝鮮側も水面下で米朝協議の開催を図っていたという。
「北朝鮮で拘束中の米国人4人について、『大統領経験者をトランプ大統領の特使として派遣すれば問題は解決する』と持ちかけていたのです。しかし米国はそれに応じず、ジョセフ・ユン北朝鮮担当特別代表が訪朝。また、6月には北朝鮮の駐インド大使が『米韓軍事演習中止を条件に、ミサイル実験の凍結について話し合う意思がある』とも発言しましたが、それも無視されました」(前出・北氏)
50年に朝鮮半島の主権を巡って勃発した朝鮮戦争は、韓国側に米国を中心とした国連軍が付き、北朝鮮と中国を相手取った、いわば東西冷戦の“代理戦争”だった。53年に休戦協定が結ばれたが、現在も平和協定の締結はなく、あくまで“休戦”のままである。しかし、
「協定は国連軍代表の米軍と北朝鮮、そして中国義勇軍の三者で締結されましたが、中国義勇軍はもう存在しません。現在では、米朝がともに一方的に休戦協定の廃棄や脱退を表明しています。さらにどちらかが協定に違反した場合は、事前通告なしでも戦闘を開始できる取り決めになっているのです」(前出・北氏)
つまり協定の“存在意義”は、すでになし崩しになっているのだ。