国内プロ選手の逆転出場も
しかし、国内プロ選手の参加が100%ありえないのかというと、実はまだわからないという声も少なくない。選手会関係者からは「今後の交渉しだいで(WBCIが)日本に権利を渡す可能性はある」という楽観論も聞こえてくる。
前出・野球ライターが言う。
「実際にNPBの関係者がWBCI側に新たな提案を持ちかけているといいます。日本ラウンドに限ってWBCの大会スポンサーとは別に『ジャパン』のスポンサーを募り、ヘルメットやユニホームにロゴをつけることを許可してもらい、そのロイヤリティをWBCIとNPBで折半にするというのです」
これによってWBCIは新たなロイヤリティ収入を得られる。NPBもスポンサー料をある程度公平に受け取ることができ、それを選手会に還元しようというのだ。
「この交渉が成立すれば、いちおうは選手会の顔も立つでしょう。合わせてNPBは、大会中のケガの保障を100%する案を選手会に提案することも検討しています」(前出・野球ライター)
こうした“懐柔策”に加えて、選手自身の気持ちも“逆転参加”の可能性を後押ししているという。スポーツ紙デスクが解説する。
「選手会の多数決でも、最初は賛成・反対が半々でした。広島の前田健太(24)は『1回も出ていないので、出たい気持ちはある』、西武の中村剛也(28)も『決まったことだからしかたないけど、残念といえば残念』と本音を漏らしています。前回大会に出場した巨人の内海哲也(30)も『WBC出場は自分にとっていい経験になっている』と複雑な表情で話しています。何らかの妥協点が見いだせれば出場の可能性も十分ある」
そうなった場合、最強の侍ジャパンはどういった選手で構成すべきなのか。
「ブンブン振り回すよりも、調子の波が小さく確実に率を残せる選手を中心にするべき」
と話すのは、WBCの第1回大会で日本代表内野守備走塁コーチを務め、優勝を経験している解説者の辻発彦氏だ。具体的にベストオーダー(別表参照)を示し、こう説明する。
「まず現役メジャーに敬意を表してイチローと青木は外せないでしょう。実績も申し分ないですしね。守備力はもちろん大事ですが、ケガ人や故障者が出ることも考えられるので、複数のポジションをこなせるタイプを選ぶことも重要です」
相手が右投手なら、糸井の代わりに巨人・長野久義(27)、中村をファーストに入れて、DHにソフトバンク・内川聖一(29)という布陣もあると言う。
「先発投手は黒田、前田、田中将大(23)=楽天=、杉内俊哉(31)=巨人=かな。4人ともスピードだけでなく縦のスライダーやフォーク、チェンジアップなどを武器に持っている。外国チームはまっすぐには強いから落ちる球が絶対に必要。中継ぎは、やはりチェンジアップが決め球の山口鉄也(28)=巨人=。逆に抑えは、まっすぐで三振が取れるタイプがいい。国内には残念ながら見当たらないので、ダルビッシュを指名したいですね」
一方、将来性のある若い選手に国際舞台を経験させるべきと指摘するのは野球解説者の江本孟紀氏。
「2年目の澤村拓一(24)=巨人=、売り出し中の堂林翔太(20)=広島=、今年は今イチながらパワーのある中田翔(23)=日本ハム=などを思い切って抜擢してもいい。3月という開催時期を考えると、ベテランはまだコンディションが整わない。その点、若手はキャンプ序盤から仕上げていくから調整も問題ない。加えてメジャー関係者にアピールしてステップアップしたいという意欲も強いですからね」
辻氏、江本氏が推す布陣ならば、確かに3連覇も視野に入ってくる。
はたして選手会が翻意するのか、それとも混成軍という衝撃のシナリオが現実となるか。最終的な決断がまもなく下される─。