財布がどんどん寂しくなっていく年の瀬、プロ野球界では景気のいい話が乱れ飛んでいる。億単位の数字が並ぶ、オフ恒例の契約更改。実はその銭闘の舞台裏では、スポーツ紙が書かない「大物5人」の壮絶なドタバタ劇と表には出せない「密約」がうごめいていた。
日米に衝撃を与えたのは、日本ハム・大谷翔平(22)の契約更改で球団が「容認」した、来オフのメジャー挑戦。島田利正球団代表が「4年間の実績を認めた」と、もっともらしいコメントを残したが、これは「入団後3年を経過したあと、本人の意思しだいでメジャー挑戦できる」という、入団の際に交わした「サイドペーパー」、すなわち「密約」を遂行しただけのこと。そして球団にとっても渡りに船のメジャー移籍となる。その理由をスポーツライターが解説する。
「日本ハムはデトロイト・タイガースでフロント経験のある吉村浩GMが、メジャーの資金力のない球団の編成方法にならい、選手の年俸総額を約25億円と決めている。大谷の給料が今後どんどん増えていけば、やがては総額を超えるため、いずれにしろ出て行ってもらうしかないのです。現在、ポスティング譲渡金の上限は約22億円ですが、1年ごとの更新であり、いつルールが変わるかわからない。撤廃の動きもあり、22億円を手にできる間にまとめたかった」
しかも球団はメジャー容認のどさくさにまぎれて7000万円アップの2億7000万円でサインさせ、ファンから「安すぎる」「夢がない」という批判が相次いだ。10勝&22本塁打に加え、日本最速の165キロをマークしてのリーグ優勝と日本一、さらにMVPとベストナインのW受賞までしたのだから、3億円を突破しないのが不思議。それでも大谷は一発サインした。
「大谷は一切お金に頓着がなく、私生活ではまったくムダづかいをしない。高い買い物は、タイミングを見て大人買いしているスーツや私服などの洋服代程度。それ以外はコンビニ代くらいで、会社帰りに赤ちょうちんに寄るサラリーマンよりもお金を使っていないかもしれません」(北海道のメディア関係者)
来オフ流出容認込みの、格安契約だったのだろう。
メジャーリーグ機構が先頃、メジャー選手会と合意に達した新労使協定では、海外選手獲得に伴う総契約金が575万ドル(約6億5600万円)に制限され、適用年齢が23歳未満から25歳未満へと引き上げられた。来オフの大谷はまさに、この「25歳ルール」に引っ掛かる。しかも年俸が低く抑えられるマイナー契約しか認められないという横槍も入った。栗山英樹監督(55)は「関係ないんじゃない? (大谷は)お金が夢じゃない」と言うが、ポスティング譲渡金だけでなく大谷でひと儲けしようとしているだけに、球団サイドはこのルールの行方に気が気ではない。というのも、メジャー移籍時に球団自体が大谷の「代理人」になる道を模索しているからだ。
前出・北海道のメディア関係者は、次のように説明する。
「田中将大(28)がメジャー移籍する際、楽天が同じことをやろうとしましたが、それはキックバックになるからと、メジャー機構が認めませんでした。それを知っているだけに、日本ハムは球団とは関係のない別会社を作って代理人業務ができないか調べている。イチローのマリナーズ移籍時にはポスティングを認める条件として、移籍後2年間はオリックスに野球以外の仕事でのさまざまなロイヤリティが入る契約を結んでいた。事実上の代理人ですね」
こうした大谷用「代理人会社」設立計画のほか、何とかこの大物クライアントを手にしようと、周辺には自薦、他薦の怪しい人物がウロウロしているという。