昨年12月の全日本選手権をインフルエンザで欠場した羽生結弦だが、2017年もフィギュア界は彼を中心に回るのは間違いない。
男子は4回転ジャンパー時代に突入し、若手の宇野昌磨やネイサン・チェンらが台頭するなか、3種類の4回転を操る。羽生自身もケガを克服し、母・由美さんやANAスケート部の城田憲子監督のサポートで世界王者奪還に挑む。
城田氏といえば、かつて「フィギュア界の女帝」とマスコミ報道された人物だ。06年3月、朝日新聞が日本スケート連盟の不正会計問題をスクープ。規定にない金銭(通信費や運営費等)を受け取っていたとして、翌月には城田氏を含む8人の理事が引責辞任した。元連盟関係者が話す。
「いわゆる悪質な金銭授与ではなかった。組織の決裁を待つ余裕がなく、私的な判断に基づく運用と言えるかもしれません。その目的にしても、強化選手に関わる出費などだったと記憶しています。だからこそ2年後には、連盟理事会の容認の下で海外の試合にジャッジとして派遣されたし、09年には村主章枝と織田信成からの活動復帰要請が通り、現場復帰を果たした」
実は、その城田氏は羽生の母・由美さんの良き相談相手だったという。羽生の地元・仙台のマスコミ関係者が振り返る。
「ソチ五輪では練習環境の調整や演技曲の選定、衣装選びなどでサポートしたと報じられたが、羽生が10年に日本人で4人目(02年高橋大輔、05年織田信成、06年小塚崇彦)の世界ジュニアチャンピオンに輝いた頃から、すでに陰で2人を支えていた」
羽生のスケート人生の歩みを語るうえで有名な話の1つが、2歳の頃からぜんそくを抱える羽生へのケアを巡る連盟とのトラブルだという。前出のマスコミ関係者が続ける。
「飲み薬だけでなく、吸入薬も常備しなければならないゆづクンにとって、海外遠征は心配事でした。飛行機だと、気圧の変化によってぜんそくの発作を起こしかねないからです。しかたなく、由美さんは自腹で同行していましたよ。聞けば、連盟に願い出ても、『ドクターがいますから』の一言で却下されるばかりだったそうです」
旅費問題ばかりではない。関係者パスさえも発行されず、一般チケットを購入して会場入りしていた。
「見かねた城田さんが、マスコミ関係者を通じて取材パスを用意してくれたこともあった。ただ、そのパスでは、ミックスゾーンで声をかけてあげることぐらいしかできない。安藤美姫や浅田真央クラスであれば、家族パスが2枚以上も簡単に用意されていただけに連盟の対応に疑問が残ったものです」(前出・マスコミ関係者)
当時を知るスポーツ紙カメラマンも、同行する母親を目撃していた。
「飛行機の中で発作に襲われないようにするためなのか、お母さんが一晩中、背中を優しくさすっていましたね。リクライニングにして脚を抱えるように横向きに寝ている羽生くんが、時折親指を噛むような苦しげな表情を浮かべることもありました」
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