トランプ大統領の就任演説3日前、新政権の高官候補にあがる重要人物が突如、在沖縄米軍の移転に関する驚きの提言をブチ上げた。解決の兆しを見せない問題に風穴をあけることになるかと思いきや、新たな紛争の火ダネになることが発覚。実行すれば中国が猛反発し、日本侵攻を開始するという戦慄のシナリオだったのである。
1月17日、米「ウォールストリート・ジャーナル」紙に掲載された論文が波紋を広げている。
〈日米関係を悩ます沖縄から一部兵士を(台湾に)再配置すれば、ワシントン(米政府)は東京(日本政府)との緊張を緩和できる。台湾は地理的に沖縄やグアムよりも中国や南シナ海に近く、こうした地域への迅速な米軍配備をより柔軟にする。米軍の台湾駐留によって、東アジアの軍事力を強化できる〉
在沖縄米軍の「台湾移転」を提言したのは、アメリカのジョン・ボルトン元国連大使(68)。ドナルド・トランプ大統領(70)の新政権で国務副長官としての起用が噂されている重要人物だけに、その発言の影響力は小さくない。これはいったいどんな意味を持つのか。
「台湾移転は、中国に対するアメリカの脅しです」
こう説明するのは、中国事情をよく知る作家の北一策氏である。
今秋、中国は5年に一度の共産党大会を迎える。国内で指導部の求心力を高め、2期目の習近平(63)政権では、「中国・台湾統一」に向けて本腰を入れて動きだすことが現実味を帯びているのだ。北氏は言う。
「アメリカは、いずれ中国が『1つの中国』を実現させるために武力行使することを知っています。米軍が台湾に駐留することになれば、中国人民解放軍は台湾侵攻ができません。『好き勝手なことはさせない』という牽制になるでしょう」
「1つの中国」政策の終焉を示唆したトランプ大統領もそれを警戒しているのか、大統領選挙勝利の直後に、台湾の蔡英文総統(60)との電話会談を実現させている。
しかし、米中関係が緊張感を増す中、トランプ大統領が台湾移転を実現させれば中国の猛反発は必至。「脅し」を無視するケースも想定される。軍事ジャーナリストの潮匡人氏に「最悪の場合」を解説してもらうと、
「事態が動いた時を前提に考えると、中国からの(台湾への)弾道ミサイル発射を警戒するのなら、移動可能な海上配備Xバンドレーダー(ミサイル防衛用レーダー)を台湾周辺に展開することが想定されます」
横須賀を母港とする海上自衛隊のイージス艦を含めた空母機動部隊が台湾海峡に向けて動きだすことも現実的だという。
「96年の台湾海峡危機(台湾周辺海域での中国のミサイル実験)では、中国と台湾の軍事的緊張が高まりました。アメリカは空母2隻を台湾海峡に派遣しましたが、今回も同じようなことが起こりえます。当時の中国は戦力が低かったので手を引いたものの、今度はそうなる保証がありません。中国の戦力は比べ物にならないほど上がり、戦争にもなりかねないのです」(前出・潮氏)