かつて日本ハムは新たなフランチャイズを求め、東京ドームを去った。それから13年がたち、今度は巨人が新本拠地へと移るべく、具体的な撤退計画を立てているというのだ。その全貌を明らかにする。
昨年9月27日、東京ドームで行われた巨人・中日戦のプレーボール直前。観戦に訪れた巨人の球団幹部は空席だらけのレフトスタンドを見上げ、茫然と立ち尽くしていたという。この日の入場者数は、実数発表以来ワーストとなる2万5397人──。
「ちょっとヤバイですよね」
1番・センターで先発出場した長野久義(32)は試合後、報道陣の前で思わず本音を口にしたという。
昨季のセ・リーグ6球団の主催試合の入場者数を見ると、巨人だけが前年比マイナスに終わっている。球団関係者は表情を曇らせて、こう話すのだ。
「今の巨人には日本ハムの大谷翔平(22)のような、客を呼べるスター選手がいません。しかも若手が伸び悩み、今後さらに集客面でも苦戦が予想される。また、かつては1試合約1億円だった放送権料も半額以下に。経営は逼迫しています」
巨人の売り上げの9割を占めるのは、入場料と放送権料。この2つの収入減の埋め合わせは、目下の差し迫った経営課題なのだ。
「巨人は本拠地・東京ドームを運営する株式会社東京ドームに1年で約30億円の使用料を支払っていますが、これが年々、負担になっている。球団幹部の間からはたびたび、『手遅れにならないうちに、本拠地を自前の球場にしたい』という話が出ています」(スポーツ紙デスク)
仮に巨人が球場を所有することができれば、年間30億円が浮くだけでなく、球場内の看板広告料や飲食、グッズの売り上げなど、東京ドームに入る収入が全て球団のものとなる。
「東京ドームを買収するのが手っとり早い方法ですが、開業から30年近くが経過して老朽化が著しいため、新たな改装工事が必要になる。しかも、東京ドームは約1600億円の有利子負債を抱えているため、球団幹部に買収の考えはないようです」(前出・球団関係者)
そこで、選択肢として浮上してくるのが「新球場の建設」なのだ。
11年9月、当時、球団オーナー兼社長だった桃井恒和氏(70)は産経新聞紙上で「自前の球場が理想的」と展望を語っている。さらに、同時期の朝日新聞の取材に対しても、東京ドームからの移転について、具体的にこう言及している。
「『こういうところでできるんじゃないか』という話は出たことがある。ただ、東京で探しても(適地が)なかなかない。よく言われるのが、(市場移転後の)築地。自治体が土地を用意してうちが球場を造るなら、ありうる」
この築地プランは読売新聞グループ主筆の渡邉恒雄氏(90)も熱望していた。
「交通の利便性も抜群だし、何といっても築地には読売のライバル、朝日新聞東京本社があるからね。これ見よがしに見せつけることができる」(前出・スポーツ紙デスク)
日本野球機構(NPB)の関係者が声を潜めて言う。
「実は一時、『築地と松井がセット』と言われていた」