球界関係者が語る。
「結局、巨人がDH制導入に必死になる理由は、『打倒パ』もさることながら、人気面での不振が大きい。グループ会社の日本テレビでさえ、地上波放送の試合数を大幅に削減したまま。DHが使えれば、当然、外国人をそこに当てはめることができるので財力のあるチーム、すなわち巨人が有利になります。投手がなかなか育ってこないことと、やはり東京ドームは打者有利の球場なので、そのアドバンテージを最大限に生かしたいと考えているんですよ。ナベツネさんの意を受けた読売関係者の間では『巨大戦力の持ち腐れを解消しろ』との号令が出ている。強い巨人を復活させるには、最適な制度なんです」
早くもDH制導入にあわせて、大物選手の獲得にも意欲を見せているという。さるセ・リーグ担当記者が耳打ちする。
「巨人が狙っているのは、早稲田実業の“怪物”清宮幸太郎ですよ。最後の夏となる東京都大会の会場を神宮球場開催にしなければいけないほど、その人気は絶大。もっぱら人気の清宮の獲得を見据えての制度改革だと言われています。もともと、巨人は守備に不安のある清宮の評価は必ずしも高いものではありませんでした。清宮は守るところが一塁しかないので、セだとどうしても出場機会が限られ、争奪戦では、パ・リーグが圧倒的に有利なのです。でもDHが使えるとなると巨人にも獲得のチャンスが出てきます」
清宮は東京五輪出場をにらんで早大進学が濃厚と言われているだけに、DH制導入までに4年間の猶予期間がある計算となる。つまり2020年のドラフトまでに、セ・リーグがDH制を導入できればいいという巨人の身勝手な計算がかいま見えるのだが‥‥。
「巨人以外では阪神も同調のスタンスです。やはり野球は打たないとおもしろくない、と野球のエンターテインメント性を高める意味で大賛成しています。観客動員アップに懸命な努力をしているDeNAもコンテンツがおもしろくなければファンが来ないと、DH制に大賛成です。そもそも巨人、阪神、DeNAには、DH向きの選手が多いですからね」(前出・球界関係者)
巨人は38歳の阿部慎之助に今なお頼っているが、DH制が導入されれば、間違いなく選手寿命が延びる。阪神にしても、若手が伸びているが、40歳の福留孝介、FAで獲得した35歳の糸井嘉男、鳥谷敬らベテランの力に依存しているところも大きく、DH制が導入されれば、彼らの選手寿命が延びてチーム編成も助かることになる。DeNAも4番の筒香嘉智の守備力は不安定。DH制があれば、さらに数字を伸ばす可能性はあるだろう。
一方、広島やヤクルトは反対の立場だ。
「打って走って守ってこそ野球なんだという伝統を重んじる広島が反発している。同じ理由でDHを採用していない東京六大学野球が本拠地とする神宮球場を使用している事情から、ヤクルトも積極的ではありません。中日も、元来のチームカラーが守備的なので、DH制になると不利だと考えているようです」(放送メディア関係者)
二軍のゲームでは、セでもDHを使うチームが増えているが、広島は、今でもホームゲームでは、DH制を採用していないほど。
「野球規則では、『DH制の採用はリーグの判断に委ねられている』と記載されていて、セの実行委員会で決議をまとめれば導入できる。巨人は根回しを終えて早ければ2019年シーズンからDH制を導入したい考えです」(前出・セ担当記者)
球界のドンが直々に乗り出しかねない状況なだけに、セ・リーグの導入は意外とスムーズに進展するかもしれない。