キャンプ視察を終えて帰京後も、その動きは活発だった。翌13日の朝7時前。ミスターを乗せたダークグレーのレクサスが、田園調布の自宅を出発する。04年3月に脳梗塞で倒れて以降、過酷なリハビリを繰り返す姿を13年にわたって見続けるスポーツジャーナリスト・吉見健明氏が語る。
「専属の男性トレーナー(理学療法士)、広報担当者らと自宅近くにある多摩川台公園内のグラウンドに行き、50メートルほどの距離を10往復し、さらに公園下から自宅まで続く約1キロの勾配のきつい坂道を散歩して帰るのが、月曜日の日課になっている。13日はグラウンドには姿を現さず、散歩のみだったけど、キャンプ視察の疲れは微塵も感じさせず、20分もかからずに軽快に坂を上っていったよ」
懸命のリハビリで右半身の麻痺からは順調に回復しているが、昨年末頃からは、よりハードなメニューにも取り組んでいるという。球界関係者によれば、
「タオルを握り、トレーナーにグイグイ引っ張ってもらって、すごいスピードで走る。従来のリハビリからは確実に進化しています。あるいは鉄アレイを持って鍛えたりも」
多摩川台公園の他に、リハビリの拠点としているのは、東京・港区にある国立科学博物館附属自然教育園。東京ドーム4個分の広大な敷地を持つ緑豊かな同園に、火曜日から土曜日まで週5日ペースで訪れることもあると話すのは、前出・吉見氏だ。
「一般開園前の朝7時40分に到着し、約30分間、トレーニングを行っています。今年も1月6日からここで始動。特に土曜日は圧巻ですよ。トレーナーに右上半身を支えてもらい、『イチ、ニ、ヨイショ!』と腹から大きな声を出しながら、麻痺の残る右足を思いっ切り蹴り上げて、約30メートルの距離を一気に駆け抜ける。そのあとはバットを持って、素振りを30回。もはやリハビリの次元を超えているね」
毎週木曜日には都内のリハビリ病院を訪れ、専用の機器やバランスボールなどを使って筋力アップにも励んでいるという。
「積み木を動かすリハビリなどで、右手の動きもだいぶスムーズになっているようです。右手でソフトボールより少し大きめのボールを投げられるようになるまでになった」(前出・吉見氏)
当初はかなり不自由だった、言葉のリハビリも継続。
「その一環として、カラオケもやっています。ミスターは演歌、ムード歌謡が好き。特に好きなのは、ディック・ミネの『旅姿三人男』だね」(前出・球界関係者)
この他、石原裕次郎も好んで歌っているという。