【6】アメリカと中国の“大国タッグ”で正恩体制崩壊へ
一方、トランプ政権の発足以来、懸念されていた米中関係が、暗殺事件の“余波”で好転しているという。
「アメリカは、正恩氏のこれ以上の暴走を中国に抑えてもらいたいので、トランプ大統領が就任当初かたくなに認めなかった『一つの中国原則』を堅持することを約束。2月9日に習近平主席との電話会談を実現し、関係強化で合意しました」(辺氏)
ここで言う「一つの中国」とは「中国と香港、マカオ、台湾は不可分の統一国家である」とする主張で、中国は北朝鮮をソデにしても、アメリカの“お墨付き”が欲しかったようだ。
「中国は2月18日に、北朝鮮からの石炭輸入の全面停止を発表しました。これはアメリカへの返礼と見ていいでしょう」(前出・辺氏)
中国から北朝鮮への圧力・制裁は今後も続くと見られている。行き着く先は、正恩体制の転覆だ。
「中国の本音は『アメリカが対中外交で譲歩してくれるなら金正恩を見限ってもいい』というもの。北朝鮮という“国の枠組み”が残るなら、北の反乱分子がクーデターや宮廷革命を起こすように中国がしむけていくと考えています」(前出・辺氏)
【7】北の「弾道ミサイル」東京直撃で半径10キロが壊滅
朝鮮半島の緊張が高まる中、日本も対岸の火事では済まされない。専門誌「軍事研究」編集部によれば、
「北朝鮮は日本のほぼ全域を射程に収める『ノドン』を100発以上保有。自走式発射機は50両あるので、一気に最大で50発のノドンを日本各地に発射できることになります」
正男氏殺害でVXガスが使用されたが、化学兵器の研究も常に行われている。
「VXやサリンといった神経剤、マスタードガスなどの糜爛(びらん)剤を総計2500~5000トン備蓄し、炭疸菌、天然痘ウイルス、ボツリヌス菌毒素などの生物兵器も多数保有していると考えられています」(前出・「軍事研究」編集部)
仮に700キロの弾頭にサリンが充填されたノドンが東京駅を直撃した場合、その被害は甚大だ。
「サリンの半量が有効に作用したと仮定しても、半径約10キロがサリンに覆われます。北は足立区、南はレインボーブリッジを越えて臨海トンネル地域、東西では江戸川区から杉並区にかけて致死量の神経ガスがばらまかれ、壊滅状態になるでしょう」(前出・「軍事研究」編集部)
3月2日から「米韓合同軍事演習」が始まった。緊迫度はさらに高まる。次は“試し撃ち”とは限らない‥‥。