異国の地でなかなか成果をあげられない。そのストレスを発散させているのは、もっぱら中華料理店だという。
「国民の約7割をイスラム教徒が占めるマレーシアでは酒を出す店が少ない。でも和食屋は高すぎるし、日本人の口に合わないケースも多い。そのせいか、中華料理店は海外から押し寄せた報道関係者でどこも大繁盛。日本人記者たちもヤケ酒をあおりながら、『何か(情報)取れた?』とグチをこぼし合っていましたよ」(テレビ制作会社ディレクター)
憂さ晴らしの酒の次は“オンナ”。世界的な報道ラッシュの影響で、ピンク産業が時ならぬ“バブル”を迎えていた。
「クアラルンプールではかねてから、ベトナム国籍の出稼ぎ売春婦が幅を利かせていました。料金相場は1回につき約5000円。観光ビザで短期滞在中に稼げるだけ稼いで帰国するんですが、金払いのいい報道陣がアジア中から集まっている噂を聞きつけ、ここぞとばかりに大量流入しています」(現地メディア関係者)
売春婦たちがダンススペースを備えたクラブなどで、外国人客に声をかけては淫売行為を持ちかける。こうしたウラの風俗事情は世界的に知られているという。
「報道関係者には、海外の買春事情に精通した人間が少なくない。今回の事件を受けて、『あそこに行けば、いいオンナが安く買える』とフラチな理由で現地行きを志願する男性スタッフもいたようです」(前出・民放関係者)
もちろん、報道の使命を胸に渡航したのが大半で、こうした「買春ツアー組」はごく一部だったと信じたい。
一方、日本国内に目を向ければ、「事件取材」でかさむ制作費に各情報番組が頭を悩ませていた。
「取材班の渡航費に滞在費、それに現地で雇うコーディネーターの人件費などを合わせたら、膨大な額になります。潤沢な予算がある局の報道部は別として、番組が現地に送り込めるのは、レポーターを含めて2人が精いっぱい。ディレクターがハンディカメラで撮影も兼務しているくらいです」(ワイドショースタッフ)
前代未聞の「暗殺テロ」事件を受けて、特に各局のワイドショーは、企画の差し替えを余儀なくされた。
「放送日の調整に苦労しましたが、幸いお蔵入りになった企画はありませんでした」(前出・ワイドショースタッフ)
だが、一連の報道の舞台裏では、北朝鮮問題に詳しいコメンテーターを巡って激しい争奪戦が勃発していたのだ。
「やはり名前も実績もある『コリア・レポート』編集長の辺真一さんや、『デイリーNKジャパン』編集長の高英起さんにオファーが殺到していたようです。さすがに、朝なら朝、昼なら昼と、同じ時間帯に違う局をハシゴすることはなかったようですが、なかなかスケジュールが押さえられずに苦労しました」(前出・ワイドショースタッフ)
「バカ騒ぎ」はいつまで続くことやら──。