豊洲移転問題で本来責任を問われるべき石原慎太郎が、「小池憎し」の怨念で3月3日に“逆ギレ”会見を開いた。みずからを「侍」とし「果たし合い」の覚悟で次に向かう先は、20日の召喚が予定されている百条委員会。勝つのは老侍かケンカ屋か──インサイド証言から両者の全内幕が明かされた!
「混迷の責任は小池知事にあると思う。やることをやらずに、日々築地で働いている人を生殺しにしながらほったらかしにして、ランニングコストにお金がかかる。(小池知事は)今の責任を取るべきだ」
3月3日、日本記者クラブでの会見で、こう小池百合子東京都知事(64)を痛烈に批判した石原慎太郎元都知事(84)。が、肝心の豊洲新市場への移転問題については「記憶にない」「聞いていない」‥‥。氏を古くから知る自民党ベテラン議員は「晩節を汚してほしくないと思っていたが、この会見は石原さんらしくない」と、感想を漏らした。
会見場所は石原氏が1999年の都知事選出馬会見をした場所で、私も当時取材者の一人だった。ポケットに片手を突っ込んで颯爽と歩いて登場した石原氏は、「東京から日本を変える」とスケールの大きな公約を並べ、大本命の知事候補らしく堂々としていた。
場所も注目度も同じだが、この日“あの時の雄姿”はなかった。理由は「老い」ではなく内容で、どう聞いても「言い逃れ」にしか聞こえなかったからだ。
会見冒頭、石原氏は「座して死を待つわけにはいかない」「小池百合子都知事のランニングドッグ(=手下)のマスコミが自宅に詰めかけた」と語った。またこれまで自宅玄関前で「屈辱を晴らしたい」と怒気を強め、会見出発の直前には「果たし合いに出かける昔の侍のような気持ち」と語り、知事を「敵」としてきた。
心情はわからないでもないが、こうした「敵意」は筋違いではないだろうか。
豊洲問題はみずからの都知事時代の決定が原因で、当時の最高責任者として事実を語り説明責任を果たすのは当然。しかも、都民の圧倒的人気と支持で知事の椅子に座ることができたのだ。向き合うべきは敵対心を抱く小池氏ではなく事実を知りたい都民のはずだ。
石原氏は昨年秋、小池知事側に豊洲問題についての経緯を文書で回答。しかし肝心な部分は「聞いていなかった」「覚えていない」などとかわした。
これに対して小池知事も黙っていなかった。
莫大な汚染対策費が見込まれるのに、豊洲の土地売買契約を結んだのは知事の裁量権の乱用だとして、都が石原氏に約578億円を請求するよう求める住民訴訟が、2012年5月東京地裁で起こされた。都は石原氏に責任がないとしてきたが、小池氏はもう一度都自身で再点検するとし、これが石原氏に火をつけた。会見でも「住民訴訟をもう一回ひっくり返したことが、みずから会見を開くきっかけにもなった」と吐露している。
現在、多くのメディアが「小池vs石原」の構図をあおっている。が、小池氏サイドはいたって冷静のようだ。知事を支持する都議会会派幹部は言う。
「最初に豊洲移転を延期して、安全性再調査で火をつけたのは小池知事です。でも、ここへきて石原さんが勝手にカッカしてエスカレートしていったという流れです」
都議会に百条委員会が設置され、3月20日に召喚される予定の石原氏。だが、答弁しだいでさらに火だるまになる可能性もある。
相対的に小池知事の存在感は強まり、今夏の都議選では「都民ファーストの会」の勝利にもつながるという流れになりつつある。
鈴木哲夫(ジャーナリスト):58年福岡県生まれ。テレビ西日本報道部、フジテレビ政治部、日本BS放送報道局長などを経てフリーに。新著「誰もかけなかった東京都政の真実」(イースト・プレス)が絶賛発売中。