大会初日の第1試合で至学館との初出場校対決を制し、みごと2回戦へ進出した呉(広島)。その呉にはある記録への期待がかかっている。ズバリ“初出場初優勝”である。
実は夏の選手権に比べて春の選抜のほうが、初出場校の快進撃、旋風が起こりやすいのだ。昭和以降では、春夏を通じて初出場で初優勝を成し遂げたのは、夏の3校に対して、春は10校を数えるのである。
昭和9年の東邦商(現・東邦=愛知)に始まり昭和25年の韮山(静岡)、昭和28年の洲本(兵庫)、昭和39年の徳島海南(現・海部=徳島)、昭和43年の大宮工(埼玉)、昭和47年の日大桜丘(東京)、昭和59年の岩倉(東京)、昭和60年の伊野商(高知)、平成7年の観音寺中央(香川)、平成16年の済美(愛媛)まで計10校。80年代以降でも、決勝戦であの“KKコンビ”のPL学園(大阪)を完封した山口重幸(元・阪神)投手擁する岩倉、準決勝で清原和博(元・読売)から3打席3三振を奪い、PL学園を力でねじ伏せた渡辺智男が投打の大黒柱だった伊野商、香川県勢に35年ぶりの優勝をもたらした観音寺中央、そして大会史上最速の創部3年目で優勝した済美と4チームもあるのだ。準優勝に限っても、夏の2校に対して春は6校もあるのである。
呉の2回戦の相手は昨秋の明治神宮大会覇者で、今大会も優勝候補筆頭の大本命・履正社(大阪)だ。確かに簡単に勝てる相手ではないが、過去にこうした旋風を巻き起こしたチームは必ずといっていいほど“大物食い”を果たしてきた。初戦、2点のビハインドを9回に追いつき、延長12回にまでもつれこむ激戦を制した呉には勢いがある。果たしてその勢いで、“打倒・履正社”を成し遂げ、勝ち進むことが出来るか。
(高校野球評論家・上杉純也)