春のGI戦線は後半に突入し、盛り上がりを増すばかり。これまでもスタート後の激しいコース取り争いやラストの熾烈な叩き合いなど、イエローカード=制裁覚悟のアツい攻防が繰り広げられている。そこで「制裁点」に注目すると、ランク上位には意外な名前が連なり、ファンの大歓声の裏で因縁やそれぞれの思惑がぶつかり合っていた──。
4月30日時点で62勝と、東西リーディングを突っ走り、かつ、勝負強さが際立つM・デムーロ(38)。今年はすでにGIフェブラリーSを含む重賞8勝、連対率は驚異の4割超えと、馬券を握りしめるファンにとっては心強い活躍を見せている。ただ、意外なことに「制裁点」でも毎年のように上位にランクインしているという。スポーツ紙デスクが話す。
「昨年の戸崎圭太(36)は、斜行などで科せられる制裁が一度もありませんでした。制裁点ゼロでの東西リーディング受賞は史上初のことです。ただ今年は、デムーロの調子があまりにもいいので、もしかしたら昨年の真逆、制裁点トップで東西リーディングに輝くかもしれませんね(苦笑)」
デムーロは4月29日の青葉賞でも、最後の直線で外側に斜行し、過怠金3万円の制裁を科せられている。前出のスポーツ紙デスクが続ける。
「昨年、デムーロに科せられた制裁は70点を超えていて、最多勝利新人騎手に輝いた木幡巧也(21)とトップを争うほど。デムーロは『人気馬をどう負かすか』を常に考えているタイプ。ふだんは陽気なイタリア人ですが、レースになると“熱き男”に変わりますからね」
今年の皐月賞の時もペルシアンナイトでクビ差2着に敗れると、激情をあらわにしたという。専門紙記者が振り返る。
「ゴール板を過ぎて戻ってくる時、初GI制覇で頬が緩む松山弘平(27)に対して中指を突き立てるようなしぐさをしていたと、ネット上で批判が相次ぎました。松山はゴール直前に外側に斜行して3着ダンビュライトをあおり、過怠金5万円を科せられましたが、4コーナーでもデムーロと進路を巡ってアツい攻防があった。どうやら、それに対する怒りだったようです」
この“中指騒動”の真偽のほどは不明で、JRAからのおとがめはなかった。栗東担当の記者が話す。
「サッカーであれば、侮辱行為で一発退場でしょう。松山に事実関係を聞いたら『ふだんからボク、よく思われてないんッスよ』と、意味深な返答でした(笑)。そもそも松山の信条は先行で、常に競馬で有利な先手を奪うことを心がけている。その分、最後の直線でいっぱいになってフラつくこともあるため、後続馬に迷惑をかけがちです。昨年科せられた制裁はそれほど多くはありませんでしたが、今年はすでにその点数に迫るほどで、それがデムーロの心象を悪くしているのかもしれません」
ただ、デムーロの怒りは検量室に戻ってからも収まらなかったという。
「松山に4角で締められたことだけでなく、1角でも松若風馬(21)のアメリカズカップに不利を受けたようで、盛んにアピールしていました。言いがかりをつけられた松若は『レース中に(デムーロが)何か騒いでいましたね』と涼しい顔でしたけど(笑)。松若は温和な松山と違って常にイケイケのタイプ。昨年は東西リーディング21位タイで、単勝平均配当が1754円と、人気薄での一発が光る一方、制裁点の多さではワースト10入りしています」(前出・栗東担当記者)
5月28日に行われる日本ダービーに、青葉賞を制したアドミラブルで挑むデムーロ。片やアルアインで2冠を狙う松山。今から2人の“因縁対決”が楽しみだ。