今年も交流戦が開幕した。10年からパ・リーグが勝ち越し続け、その実力差から開催意義も問われてはいる。しかし、別リーグの、特定の相手に対する遺恨の炎を燃え上がらせる球団や選手らも目につくのだ。はたして激しいバトルがファンを熱狂させるか、いや、そもそも顔を合わせてはいけないのか──。
セ・リーグ各球団は、軒並み苦戦を強いられる交流戦を前に、いかにチーム状態を上げているかがポイントだろう。
昨オフに大補強を敢行した巨人は首位と3.5ゲーム差の3位ながら、数字以上に厳しい状況が続いている(5月26日現在、以下同)。
「とはいえ低迷の元凶とも言えるFA加入組の山口俊(29)と陽岱鋼(30)が、交流戦中には一軍に合流できる見込みです。堤辰佳GM(51)も『交流戦からが本当のスタートだ』と強気になっている。特に6年18億円と言われる破格の契約をした陽には、リードオフマンとして大きな期待をしています」(巨人番記者)
5月25日にようやく三軍で初のシート打撃に登場しただけだが、6月6日の一軍復帰が既定路線。まさに急調整の陽だが、そこには古巣に対する思惑もあるという。さる球界関係者が舞台裏を語る。
「陽は自身を“在庫”扱いした日本ハムに一矢報いたい。6月9日からの3連戦で鼻を明かすためです」
実は日ハムでは、チーム編成にあたって4通りに選手を分類しており、それは「どうしても必要な選手」「レギュラー」「育てる人材」、そして「代えのきく人材=在庫」だという。
「陽はレギュラーだったが、故障持ちもあって大きいピースではなかった。みずからを過大評価していた陽は、水面下で巨人につり上げられた条件をベースに、残留したかった日ハムと交渉しましたが一蹴されました。FA行使の会見で涙を見せたのは、すでに日ハムにとって“在庫”と化していた事実を知ったからです。日ハムのフロント内からは移籍前から『陽は活躍できないよ』との声も出ていた」(前出・球界関係者)
「巨人vs日ハム」の新遺恨はこれだけにとどまらない。吉川光夫(29)はトレードで巨人に放出されたが、
「メンタルがあまりにも弱く、何度チャンスを与えてもうまくいかないため、環境を変える時期に来ていただけです。かつてはエースも務めただけに吉川自身には捨てられた意識が強いようですが、別リーグで活躍してもらう分には、先を見据えた育成をしている日ハムの評価にもつながりますからね。今オフには大谷翔平(22)や中田翔(28)の流出問題もありますが、昨年日本一となったこともあり、『3年間で新しいチームを作れればいい』という考えで動いている」(スポーツ紙デスク)
そして、まんまと“在庫”で獲得したのが大田泰示(26)だった。下位打線ではあるもののレギュラーに定着し、すでにキャリアハイである6本の本塁打を記録している。
「栗山英樹監督(56)は以前から獲得を熱望していました。その熱意はすさまじく、当時の原辰徳監督(58)に断られても直訴したほどです。その原前監督が退任し、東海大相模出身の後ろ盾を失った大田は『2試合ダメだったら外される』と漏らすほど高橋由伸監督(42)の采配に疑問を感じていた。最後は自分から『出たい』と巨人を見限っていました」(前出・スポーツ紙デスク)
窮屈な環境から抜けた大田は、全体練習は短く、選手の自主性に任された“ハム流”が水に合い、「自分はどうすればチームに貢献できるか」と、意欲を見せているという。
「さすがに巨人への愛着心は完全には捨てきれず『巨人だったらこうしていた』と引き合いに出すので、距離を取ろうとする一軍選手もいるようですが、そうした複雑な感情が巨人戦で爆発したらおもしろい」(前出・スポーツ紙デスク)
移籍マグマがそこかしこで煮えたぎる、最大の遺恨カードとなりそうだ。