セ・リーグは巨人が優勝を決め、今シーズンの大勢はほぼ決している。それなのに、球界が次に目を向けるべき、WBC監督選出問題はいまだ難航を極めているようだ。現役監督や実績十分の経験者の名前があがっては消える。そしてついに、あの男に白羽の矢が─。
9月4日に日本プロ野球選手会が、WBCへの参加を正式表明。すると翌5日、スポーツ報知が1面を使って、「代表監督の最有力候補」として元広島監督・山本浩二氏(65)の名前を唐突に報じた。それまでは、09年の第2回大会で指揮を執った巨人・原辰徳監督(54)や、昨年の日本一監督で今年3月に一度は代表を率いたソフトバンク・秋山幸二監督(50)という現役監督が取りざたされてきたのに、である。
9月7日には、第1回大会の指揮官でもある、王貞治コミッショナー特別顧問(72)から、「現場の12人の監督は絶対断ると思う」との発言もあり、現役監督への要請を見送る方針が示唆され、山本氏ですんなり決まるかとも思われた。
ところが、山本氏に正式な打診があったかも不透明なまま、選定作業の難航ぶりばかりが各メディアで伝えられていると、18日になって加藤良三コミッショナー(71)が「現役の人の重要性が認識されている局面」などと言いだす始末で、方針のブレを露呈しているかのようだった。
球界関係者が話す。
「そもそも、ナベツネさんが就任を希望していた、前中日監督・落合博満氏(58)が拒んだことで筆頭候補不在となり、迷走している。みずから意欲を示している、楽天・野村克也名誉監督(77)に関しては、巨人を目の敵にして倒すことで名を上げてきた監督だけに、ナベツネさんが認めるはずがありません」
監督選考はあくまでコミッショナーが決定するものだが、実際はナベツネこと渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長(86)の意向が反映されると言われている。
「WBCの日本ラウンドを主催するのが読売ですからね。監督人事はスポンサー集めのためのシンボルとなる。そこで系列新聞の報知を使って、関連会社・日本テレビの解説者である山本氏の名前でアドバルーンを揚げました。しかし、反応は最悪。関係者たちから否定的な声が飛び、盟友の楽天・星野仙一監督(65)すら『ねえよ!』と大笑いする扱いでした。つまり山本氏ではスポンサーが集まらない」(スポーツ紙デスク)
今大会は、選手会が不参加を撤回するのに、WBCという名称を使用しない日本代表独自のスポンサービジネスが可能なことが確認された。この権利は大会の成功のために読売がNPBに譲渡したものだという。
それだけに渡辺会長の発言権は絶大というわけだ。
「王さんは秋山監督を説得しているようです。しかし秋山監督は、目立って人前に立つのを好まず、本当はソフトバンクの監督すら引き受けたくなかったと言われているほど。今回、候補にあがった際も、『絶対やらない!』と周囲に語っている。ナベツネさんにとっても、秋山ジャパンでは巨人にうまみが還元されません。せめて原監督を押し込みたいのですが、複数回、コミッショナーサイドが接触を試みたものの、原監督は固辞しているそうです」(前出・球界関係者)
そこで読売グループから飛び出した名前が、山本氏同様に日テレの解説者で、ほかならぬ巨人の元エース・江川卓氏(57)だというのである。