今でこそスマホでラインをマメにやるほどデジタル革命が進んでいる殿ですが、少し前までは、ケータイを常備することすら嫌い、ケータイから簡単につながる“ネット”についても、はっきりと否定していました。
「家族で飯を食べてる時、子供がずーっと携帯をいじってるのって、見ていてあんまりいいもんじゃない」
「実人生で経験してないことをネットで語っても意味がない」
等々。ネット、そして、手軽にネットへつながるツールそのものに対しはっきりと、「好きではない」といった発言をたびたびしていました。
そんな殿が、“だけどネットって、使い方によっちゃ便利らしいな”と、今までとは打って変わって、好意的な見解を抱きはじめた時期がありました。
あれは7年程前、
「北郷、あれか? やっぱりネットで調べると速い?」
「いっぱい出てくるのか?」
等々、殿がやつぎばやに質問をしてきたのです。しかし、“速いのか? いっぱい出るのか?”とは、まるで童貞の筆おろしです。
とにかく、その時期の殿は“便利ならオイラもネットをガンガン利用しようかな”といったテンションに、やや傾きかけていました。
ちなみに当時、殿の仕事部屋にはPCが常備してあったのですが、そのPCでは、決まったエロサイト以外には目もくれず、健全に何か検索するといった行為をまったくといっていいほどやっていなかったそうです。エロ一点張りのPCとは、さすが英雄! なかなか豪儀です。
で、殿の問いに対し、ネットを肯定する説明をしたのですが、その説明の仕方が悪かったのか、
「ほんとか? お前が言うとなんか怪しいな」
と、なぜかわたくしの人格を持ち出しては不信感を募らせ出すと、
「だけどいちいちネットなんかで調べるよりよ、俺の電子手帳のほうが便利なんじゃねーか? 俺のなんて、『ウグイス』って検索したら鳴き声まで出てくるんだぞ」
と、“鳴き声が出るから電子手帳の勝ちである”といった、何だかよくわからない理由で、再びネットを遠ざけ出したのです。
確かにこの時期、殿は通販で目にした、“「ウグイス」と検索すると鳴き声まで出てくる”といった電子手帳にいたく興味を示し、
「おい、今、ウグイスの鳴き声が出てくる電子手帳あんだろ。あれ買ってこいよ」
と、付き人に指示を出し、辞書や百科事典がたんまり詰まった最新型の電子手帳を購入すると、常に持ち歩いていた時期でした。
結局、その後、殿の気持ちは変わることなく、
「やっぱりネットはめんどくさそうだな」
そうつぶやくと、お気に入りの電子手帳をすばやくカバンから取り出し、“ほら”といった顔つきで、ウグイスの鳴き声「ホーホケキョ」を、なぜか得意満面に聞かせてきたのでした。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!