9月11日、福島県の子供の甲状腺検査で、1人が甲状腺ガンと診断されたことが、検討委員会で報告された。調査の終わった8万人のうち、1人である。小児甲状腺ガンの発症率は、通常は100万人に1人くらいだ。また甲状腺に5ミリ以上ののう胞やしこりが見つかった子供は、昨年度は35.6%だったのが、今年度には45.6%に増えている。それでも、検討委員会は「チェルノブイリ事故後の発症増加は最短で4年」などとして、原発事故との因果関係を否定した。
しかし、ベラルーシにおける甲状腺ガンの症例数を見ると、チェルノブイリ事故の翌年から増えている。「4年」というのは激増し始める時期だ。子供たちを放射能にさらした山下は、まだ役職を降りていない。
また、次の妄言をご記憶の方も多いだろう。
「プルトニウムは飲んでも大丈夫」
これは、05年12月に佐賀県で開かれた公開討論会で東大大学院教授の大橋弘忠の発言だ。この時、“専門家”として、「原子炉格納容器が壊れるとは思えない」という発言もしている。
しかし、福島第一原発で起きた爆発で、格納容器は壊れ、炉心がどこにあるかもわからない状態だ。「タブーなき──」では、戦犯追及だけでなく、広瀬隆氏ら複数の専門家のインタビューも掲載している。その専門家たちが、3号機で起きたのは、核爆発の一種、即発臨界爆発だと指摘している。そのために、プルトニウムが飛散したのだ。
我々のスタッフは、大橋の研究室まで行き、その真意を問いただした。まず、手始めにネット上にあふれた「大橋叩き」の質問を繰り出した。
「自分の家族がプルトニウムを飲んでも平気ですか」
すると、こう言って大橋は平然と一蹴してみせた。
「ナンセンスだ。くだらない質問には答えたくない」
しかし、次にプルトニウム以外の放射性物質について尋ねていく。そこで、大橋の発言にスタッフは虚を突かれた。
「専門外だから、よくわからない」
大橋の専門分野はシステム量子工学。コンピュータ・シミュレーションの専門家だったのだ。プルトニウムを100万分の1グラム吸い込んだだけでも、肺ガンになって死んでしまうことを知らないのも道理なのである。
大橋は東大大学院を出たあと、東京電力に5年ほど勤務。そのあとに東大に復帰した“生っ粋の御用学者”だ。原発の安全性を信じさせるために詭弁を生み出すのが、彼の仕事というわけだ。
ところが、北陸電力は昨年設置した原子力安全信頼会議に大橋を加えている。“専門外”のトンデモ学者が、現在も“原子力ムラ”を支えているのだ。