テリー でも、キャバレーで手品を覚えたわけじゃないですよね。
マギー これまた見ていた雑誌がきっかけなんですけど(笑)、「手品を習ってプロのマジシャンになろう」みたいな、今で言うカルチャーセンターの広告が出ていたんです。キャバレーは昼間、ちょっと休み時間がありますから「おもしろそうだ」と思って週に一回、遊び感覚で通って、少しずつ覚えました。
テリー そこからいきなりプロを目指すんですか?
マギー そうですね、ちょうどキャバレーの仕事もイヤになっていましたから。ただ、どうすればプロになれるのかわからないので、電話帳で芸能プロダクションを片っ端から調べて、公衆電話で連絡してみたんですよ。
テリー 師匠、のんびりしたふうなのに、意外と行動力ありますねェ。
マギー でも弱気だから、いちばん優しい応対をしてくれた事務所に行ったんです(笑)。ネタ見せしたら、そこのおじいちゃんが「じゃあ、仕事が来たら電報を打つからね」って。
テリー 連絡手段が電報っていうのが、また時代を感じさせますね(笑)。
マギー そうしたら、ある日「○月○日に生麦ミュージック劇場に行かれたし」みたいな電報が本当に来たんですよ。
テリー あ、もしかしてストリップ劇場ですか?
マギー そうなんです。でも当時は何にも知らなくて、今で言うライブハウスみたいなところかな? と思ったら、駅を降りたすぐ目の前に裸の看板があって、そこで初めて気づいたわけです。で、楽屋へ行ったら、裸のお姉さんたちがたくさんいて、もうビックリしちゃって。
テリー 夢のようじゃないですか。
マギー いやァ、「お姉さん」って言っても、皆さん50過ぎですから(笑)。僕の舞台の持ち時間は1回15分で1日4回、週末は6回だったんですけど、最初は5分ももたなくて、ひどく怒られたりしてね。
テリー ストリップ目当てのお客さんの前でマジックなんかやると、実際のところ「俺はお前の手品じゃなくて、オッパイを見に来たんだ!」なんてヤジられたりしなかったんですか?
マギー いや、ほとんどそんな感じですよ、ウケた経験はないです。だから、とにかくこちらの事情を話しながらやるしかないので、「皆さんの気持ちもわかりますけど、早く引っ込んじゃうと支配人に怒られるし、次のお姉さんにもひっぱたかれるので、すみません」ってお話したりしていましたね。
テリー それ、今やっていることと同じじゃないですかッ(笑)。
マギー そうなんですよ、まったく一緒(笑)。でも、僕の手品じゃどうにもならないんで、最終的には、楽屋に置いてある新聞や雑誌を舞台に持っていって、「手品を見るのがつらい方は、新聞と雑誌を読んでください。そのほうがお互いに楽だと思いますから」と、やってみたんですよ。そしたら、これがけっこう取りに来るんですよね(笑)。
テリー アハハハハ! 師匠、話がおもしろすぎますよ。でも、そんなストリップ劇場での修羅場が、師匠の芸の原点なんですね。