去る11月29日の横綱・日馬富士の電撃引退で、暴行事件はいよいよ第2幕に突入した。今度は相撲協会とモンゴル力士会が結託して貴乃花潰しに本格的に乗り出すというのだ。その裏には“功労者”である日馬富士と協会の“ある密約”までが浮上している‥‥。
まさに青天の霹靂だった。貴ノ岩暴行事件発生から1カ月余、いまだ角界が疑惑の黒い霧で覆われている中、11月29日、日馬富士(33)が急転、引退会見を開いた。
「先輩横綱として弟弟子が礼儀、礼節がなっていない時に直してあげることが義務だと思った」
と、暴行の理由を説明したが、自身が引退に至ったことに関しては、
「横綱としてやってはいけないことをしてしまった。責任を持つのが横綱なので‥‥」
と、未練を残したままの会見だった。同席した伊勢ケ浜親方(57)は冒頭、涙を見せたかと思えば、その後は終始不機嫌な表情。精神的にかなり不安定でイラだっている様子だった。電撃引退劇の裏で何が起きていたのか。
ベテラン相撲ジャーナリストが説明する。
「日馬富士は、事件発覚直後に暴行したことは認めたものの、現役は続行できるものと踏んでいた。秋場所でV9を成し遂げた優勝回数をなんとか二桁の大台に乗せるまでは土俵に残りたいと考えていた」
にもかかわらず、結果的には事件の全容が明らかになる前に、引退を決意したことになる。その理由を相撲部屋関係者が明かす。
「実は、相撲協会内には11年に発覚した八百長問題の苦い教訓がある。当時、相撲協会は公益法人になる以前で財団法人だった。その際に、批判を浴びた相撲協会に、解散論が取りざたされたことがある。そんな事態を避けたいというのが、八角理事長(54)をはじめとする協会内の“空気”です。今でこそ人気が復活した大相撲ですが、不祥事に対するファンの意見は非常に厳しいものがある。そこで、事件の加害者である日馬富士を刑事判断が出る前に、引退させる。それが相撲協会執行部の総意だったようです。さすがにこれには師匠の伊勢ケ浜親方はもとより、日馬富士本人も抗することができなかった。しかもその背後には、関係者に対する事情聴取で得た情報をもとに、協会と日馬富士サイドの間で、『日馬富士を一方的な加害者ではなく中立的に扱うことで横綱(日馬富士)の名誉も担保する』という“密約”までがあったといいます」
さらに、日馬富士が引退を発表した29日は、九州場所を終えて、目前に番付編成会議を控えていた。仮に、日馬富士がそのまま現役を続けていたならば、来年の初場所の番付に、横綱として日馬富士の名前が残ってしまうことになる。そうした事情も追い打ちをかけ、急遽、日馬富士の引退が早まった、というのが真相のようだ。
前出・ベテラン相撲ジャーナリストが言う。
「実際、モンゴル人力士は奥さんもモンゴル人女性の場合が多く、引退すれば祖国に帰るのが一般的。ある意味“出稼ぎ”で相撲を取っているにすぎない。日馬富士もしかりで、33歳という年齢を考えれば、引退が近いこともわかっていたはず。そこで、相撲協会に居座って解雇されるよりは、温情裁定である引退の形を取れば、慣例にのっとって退職金もあれば、功労金も支払われて1億円ぐらいの金額が懐に入ってくる。また武士の情けとして、引退式も興行することができる。国技館の土俵を使えるかは微妙だが、断髪式まで行えば、さらに2億~3億円は転がり込んでくるはずです。さらには事件を沈静化させたい協会の顔を立てることにもなり、ひいては批判の矢面であるモンゴル力士会への風当たりも収まるはず。これこそ三方丸く収める最適な落としどころだったのです。その構図を描いたのが、ほかならぬ相撲協会執行部だった」
つまり日馬富士は、今回の引退で、推定4億円の“お米”を手にするというのだ。