「久しぶりに2時間しゃべったけど、全然息切れねーな」
先日、一夜限りの復活を遂げた、高田文夫先生とのゴールデンコンビによる「ビートたけしのオールナイトニッポン(以下ANN)」の収録を終えた殿は、ブースから出てくると、まずは冒頭の言葉を放り込んできたのです。かつて、木曜深夜にこのラジオを聴き、完全に人生を変えられた方々を、わたくしは山ほど知っています。かく言うわたくしも、その一人です。今でも、わたくしが殿の弟子だと知ると、“ANNを聴いて、夜中にニッポン放送の前まで行ったんだけど、勇気がなくて、「弟子にしてください」って言えなかった”と、回想をされる方にも山ほど会いました。
ちなみに、現在アナーキーな芸風で活躍されている江頭2:50さんも、殿に弟子入りを試みたのですが、殿をがっちりとガードする軍団の兄さんに殴られ、断念したという逸話があります。
とにかくあの頃、日本全国のどれだけの若者がANNを必死で聴き、殿に恋い焦がれたことでしょう。そんな伝説のラジオを、殿自身はこう振り返ります。
「最初の3年くらいかな。自分でもノッてやってたのは。2時間ジャンジャンしゃべってもスタミナが切れなくて、テンションも落ちねーから、そのまま軍団や(高田)先生と朝まで酒飲んで、そこでまたしゃべって、それでも眠れねーから、新宿のバッティングセンターなんか行って、そのまま朝から野球やって、昼からまた普通にテレビの収録やってたんだから、ちょっと異常だったよ」
ちなみに、熱心に番組にネタなどを投稿するリスナーを「ハガキ職人」と呼んだのは、この番組からです。
で、一度、殿に「ANNでは、どの程度しゃべることを決めてやっていたんですか?」と、完全にただのファン目線の質問を、どさくさに紛れてすると、
「ネタや思いついたことなんかは、箇条書きでメモをとっておいて、それ見ながらやってたけどよ。もう一番いい時は、完全に何かが乗り移ってる感じだったよな。自分でも、後で周りから言われて、『俺、そんなことしゃべってたんだ』なんて驚いたりしてよ」
高田先生の合いの手に乗り、今ではちょっと考えられないほど恐ろしいスピードでしゃべり、速度を落とすことなく、次から次へと繰り出される的確すぎる“見立て”や“比喩”を毎週連発していた殿。今聴いても、“こんなもの、10代の時にリアルタイムで聴いてたら、そりゃ~この人の弟子になろうと思うわ!”と、つくづく思います。
「今でも自分の頭の中は、あの頃(ANN)のスピードのイメージが残ってるから、ちょっとイライラするけど、ま~あの頃が一番しゃべりのスピードが速かったんじゃねーかな」
殿の口から何度も聞いた言葉です。が、先日、復活したANNでの殿は、十二分に速く、圧倒的爆笑な2時間しゃべりを見せつけ、いや、“聴かせつけて”いました。改めて、すごい!
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!