まだまだ“不治の病”というイメージが強いガン。年間約100万人が罹患し、約40万人が亡くなる。治療は手術、抗ガン剤、放射線が主流だが、再発も多い。しかし、医者から「余命0」と宣告されて見放されたにもかかわらず、3大療法に頼らず奇跡の生還を遂げた、元末期ガン患者たちがいた。彼らのガン克服ドキュメントをお伝えしよう。
「あなたは、前立腺ガン。リンパには転移していないものの、恥骨に転移しており、ステージも最終段階の末期ガンなので、手術も抗ガン剤も放射線治療も一切できないと言われた。手の施しようがないと。そう告知を受け、“死”というものが現実に目の前に現れ、谷底に突き落とされたようなショックを受けました」
今だから、とこう話すのは佐々木英雄さん(78)だ。生まれも育ちも宮城県。定年まで42年間勤めた銀行を退職後の2007年4月のこと。もうじき死ぬのかと、目の前が真っ暗だった。地方では一番の大学病院の医者から「できることはない」と言われたのだ。
保健師だった奥さんが持っていた“健康本”を片っ端から読み漁った。なんとか治りたい一心だった。そして出会ったのが故・安保徹新潟大学教授(当時)の著書「体を温め免疫を高めれば、病気は治る!」(宝島社、石原結實氏と共著)。免疫力を上げ、自然治癒力でガンに立ち向かってみようと決める。週に1回、安保教授の勧める療法を受けるため、県外の病院に新幹線で通院する日が続いた。
「安保先生の教えがよりどころで、先生の言うガンを治す4カ条(【1】ストレスの多い生活のパターンを見直す。【2】ガンの恐怖から逃れる。【3】免疫を抑制するような治療を受けない。受けている場合はやめる。【4】積極的に副交感神経を刺激する)を手がかりに、自分なりに治療方針を立てて、実践しました」(佐々木さん)
生来の完璧主義者だった佐々木さんは、安保教授の教えを完璧に実践しようとする。それまでの忙しい生活スタイルを見直し、食事は玄米菜食主義。そして、ウオーキングや半身浴、爪揉みなどを行う。しかし一人でやる不安はつきまとう。はたしてこれでいいのか‥‥。
ガン宣告から5カ月ほどたった頃、「がんの患者学ワールド」というチラシを目にする。ガンを克服した人たちが集まる講演会だった。さっそく神奈川県内の会場に駆けつけた佐々木さんは、「原因を取り除けばがんは治る!」という熱いメッセージに感銘を受けた。
会ではガンになる3大原因を「ライフスタイルの乱れ」「食事の乱れ」「心の持ち方の乱れ」と訴えている。自身が実践していた方法とも重なる、ガンの原因と結果の図は、絶望から希望への羅針盤のように見え、ガンとの闘いにより向き合うようになった。
「22時には寝つく早寝早起きになりました。毎日1時間のウオーキングも、有酸素機能を高めるインターバルウオーキングに替えた。体を温める入浴法も取り入れ、俳句を作るようになって心に潤いも取り戻したんです」(佐々木さん)
数カ月がたち、体調は非常によかった。ガン宣告から1年が経過し、佐々木さんは大学病院でMRI検査を受けた。結果、画像からガンが消滅。今年でガン宣告から11年目を迎えたが、いたって健康だ。今では「いのちの田圃の会」(045-960-3368)の代表として、悩むガン患者に手を差し伸べてもいる。